Erection -Circuit Party- at UNIT / 晴れ豆 / BATICA

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  • 代官山UNITを中心に行われてきたパーティ「Erection」。今回は大規模なイベントを打って出た。国内のアーティストを中心にクラブ/ライヴハウスサーキットを行うという、あまり行われない枠組みだ。会場は、代官山/恵比寿周辺の5店舗。UNIT、SALOON、UNICE、晴れたら空に豆まいて、BATICAで、夕方から深夜まで行われた。 2007年から続くパーティErectionは、基本的には国内のアーティストのみでの出演者構成され、ceroとSIMI LABとPUNPEEの3マン企画、国内エレクトリックミュージシャンDORIANのアルバムリリースパーティ、そしてバレアリックDJのALFREDO、ディスコ/ハウスDJのDimitri from Paris、ディスコ・ダブのDANIEL WANGの来日パーティのサポートなども行い、これまでに数々の粋な現場を演出して支持を得てきたパーティだ。 昨年秋には自由が丘駅前で行われる街フェス、女神まつりでフリーのブロックパーティを行い、会場となった駅近隣の駐車場は満員となった。その熱気を引き継ぐかのように、今回は初のサーキットパーティーが開催された。サーキット型のイベントは、街中を散策し様々なヴェニューを巡りながら、多くのアーティストを楽しめることが魅力。既存のヴェニューが連携して、見せ方/楽しみ方を模索したことが伺えるオーガナイズ。毎回楽しみに来ているファンの前評判もあってチケットは売り切れとなった。 長年行われているだけあって、Erectionと縁のある選ばれたアーティストが出演した。今回は会場の数が多いこともあって、DJだけでなくライヴバンドも含め、100人以上の出演者となる。おおまかに分類すると、UNITと晴れたら空に豆まいてではバンド系、UNICEとBATICAではヒップホップ/レゲエ、SALOONではテクノ/ハウスを軸にしてタイムテーブルが組まれた。 まずはUNITに到着して、リストバンドを入手。これで全店舗回れるようになる。UNITのメインフロアでは、G.RINA & Midnight Sunによるライヴが終わったばかりで、大量の客が階段を登って次のステージへと向かっていた。次の知る人ぞ知る福岡からのダブアーティスト、NONCHELEEEを見るためにUNITから5分ほど歩いてBaticaへ。アナログ機材からの過剰なエフェクトをギンギンに効かせたレゲエトラックに、てきとうな歌詞の本人の鼻歌が乗る。それがぬるま湯のようなグルーヴ感を醸し出して、フロアでは笑いとともに盛り上がっていた。個人的にもニヤニヤが止まらない。フィーチャリングで女性シンガーのasuka andoや女性ラッパーの嫁入りランドが参加した曲も披露して、他のステージに出ているアーティストがゲスト出演する予期せぬサブライズが実現したのは、アーティストにとって良い意味で自由にできるイベントだったからでは。 UNITでは、大阪から来たディスコバンド、neco眠るもダンスミュージックを通過したグルーヴ感もありつつの独特のゆるさを盛り込んだファニーなライヴが楽しめた。終盤、フロアにマイクでコミュニケーションを続けて距離感を縮めるラッパーの田我流のバンドセットから、ビデオテープミュージックの大団円感ある終演は、このパーティならではの安心感のある一体感を創りあげていた。 UNICEのタイムテーブルはアーティスト同士繋がる流れが組まれ、ラップで盛り上げるFUNKLUV(ZEN-LA-ROCK&KIKRIN)から、マイクパフォーマンスで煽るやけのはら、そしてフリースタイルでフロアとコミュニケーションをとるKAKATO(鎮座ドープネス&環ロイ)の流れは、フロアの雰囲気を損なうことなく、いや、むしろ高まるように機能していた。また最近の日本語ラップの再流行もあって身動きがとれないほどの熱気を放っていた。 エレクトロニック・ミュージック系で個人的に感極まったのは、Saloonでトリを務めたCherryboy function。RolandのMC-505の実機のみでライヴを10年以上行っているが、過小評価されているアーティストだ。彼の謙虚なキャラクターを反映させた叙情的なテクノは、終演とともに拍手が何度も湧き上がった。日本人ならではの奥ゆかしさを音に表したかのような感性を持っているので、寺田創一の叙情的なハウスが再評価されたように、彼をまだ知らない多くの人に触れて欲しいと個人的には切に願っている。 どのフロアも盛り上がりを見せ、ダンスミュージック・シーンとインディバンド・シーンとの隣接した横の繋がりを感じさせる催しで、春の暖かさもあって都会を回遊する楽しみ方は希少な経験となった。裾野を広げるポップな要素を取り入れつつもコアな部分を保ち続ける絶妙なさじ加減でグッドミュージックを紹介する場として、次の一手が気になるところ。
RA