DJ Nobu and Joy Orbison in London

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  • かつてPlan Bという名前で知られていたロンドン・ブリクストンのクラブPhonoxは、2015年9月にオープンして以来、少なくともハウスとテクノファンにとっては、以前にも増して魅力的な夜遊びの場となった。Plan Bがあらゆる音楽を取り入れ、言ってしまえばこれといった方針も感じられなかったのに対し、Phonoxはローンチ当初より、ロンドンの強力なクラブやパーティーに匹敵する明確なヴィジョンとブッキングポリシーを掲げてきた。The Columbo Groupが運営する姉妹ヴェニューのXOYOやThe Nestと同様、同クラブのブッキングは組織内で行なわれる。この方法によって、オープンしたばかりのPhonoxは瞬く間に独自性と評価を獲得した。オールナイトセットにフォーカスし、これまでにMove DやOmar-S、Benji Bらが出演(今後はJeremy Underground、Ben UFO、Zipらがラインナップされている)。このようなブッキングだけで既に魅力的なのだが、何と言ってもすごいのは、たった£5という前売りチケット代だ。ロンドンでこの驚異的な値段を出せるダンスフロアはなかなか無い。そして、現時点での反応も上々だ。 ロンドンでは、チケット代が安いととにかく学生が集まる。そうすると必然的に、料金の高いイベントよりもエネルギーや熱狂が生まれる。2月12日金曜日のPhonoxは、激しくダンスし雄叫びを上げるような、興奮しきった若者達で溢れ返った。クラブのレイアウトはいつもとは少し違い、メインルームのDJブースは逆サイドに配置されていた。また、以前はセカンドフロアだったが現在はただのバースペースとなっている下の階が、かつてのような雰囲気の空間となっていた。筆者は個人的に、Plan Bの大きな魅力の1つであった小高いダンスステージが、この日はいくつか追加されていたというのが嬉しかった。 この日のラインナップは、ロンドン拠点のJoy OrbisonとWill Bankhead、そして、近年ますます海外からの注目を集める日本のベテラン、DJ Nobuの3人。筆者はOrbisonのセットが始まった直後に会場に到着した。2時間半のセットの中で、彼はシカゴクラシックからラテン、けたたましいハイブリッドなど、様々なハウストラックをプレイしてみせた。つまらなくもないが、特にヤバいわけでもないなと思っていたところ、彼は交代前の20分頃にLee Rodriguezの"All The Same Family"とArmandoの"Pleasure Dome"を立て続けにドロップした。 Armandoのトラックのおかげで、思っていたよりもNobuへのバトン渡しはスムーズにいくかと思われたが、それでも尚、2人のDJのプレイはとても対照的であった。両足でバウンスしながら険しい顔つきでプレイしていたNobuは、どんよりとしたアンビエントから始まり、ダークで音数の少ないドラムトラックへと展開。ミックスに変化を加える度にクラウド全体を見渡していた(彼は時折、友人と目を合わせては大きな笑みを浮かべていたが、それも何秒も続かなかった)。その後、彼がPearson Soundの"Freeze Cycle"を、Call Super "Migrant"へと繋げた瞬間が、この夜のピークタイムとなった。大胆な選曲とスリリングなリズムで、1人のDJにこれほど深い印象を受けたのは久しぶりであった。もちろん、これはNobuの魔術によるところが大きかったのだが、Phonoxの強烈なサウンドシステムと、愛想の良いクラウド、そして写真禁止のポシリーもまた、あの雰囲気を作り上げるのに一役買っているのだろう。
RA