Damien Lynch - The Heights / Safe House

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  • ここ数年間、いくつかの顕著な傾向がESP Instituteの作品に表れている。そのひとつが、強固でありながら決して押しつけがましくないドラムプログラミングだ。その理由の一部はレーベル設立者のLovefingers(本名、Andrew Hogge)からの影響だ。若いころのHoggeは様々なバンドでドラムを叩いており、キックとスネアにはうるさいことを自分でも認めている。他にも、遊び心とほろ苦さの間に位置するメロディセンスが同レーベルの作品に共通している。通常、マリンバとスチールドラムを模したシンセがそうしたメロディを生み出している。その例として、2014年のTambienによるトラック"Are You In Touch w/ Varan?"での5分間を贅沢に使った転調、Powder "Humid Wind"での緩やかな上昇、Young Marcoのアルバム『Biology』(英語サイト)のほぼすべて、などが挙げられる。 ESP Instituteの最新12インチDamien Lynch 「The Heights / Safe House」でメロディを奏でる楽器として選ばれたのはカリンバ(アフリカの親指ピアノタイプの楽器)だ。それにより、驚くほど素敵なイントロがもたらされた"Safe House"は本作で異彩を放っている。イントロ以降、同トラックはツタがまとわりつくように展開していき、最終的にアルペジオシンセがカリンバを圧倒する。さらに長い時間をかけて正体を露わにするのがAサイドの"The heights"だ。「リラックスして。両足の裏側に当たっているのを感じて」というサンプルボイスが挿入されるのを合図に、トラックは柔らかくにわかに生命を宿す。2013年にESP Instituteから発表されたEP「Thinking Allowed」でのTornado Wallaceに代表されるように、これまでにもダンスミュージックではWill Powersスタイルの瞑想/自己啓発ボーカルが使われてきた。"The Heights"のボーカルも十分素晴らしいのだが、同トラックの魅力は"Safe House"には及ばない。
  • Tracklist
      A The Heights B Safe House
RA