Shackleton and Untold in Berlin

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  • ベルリンの街を2つに分けて語る人たちがいる。「リングの内側」と、それ以外だ。リングバーンと呼ばれる、この一周の長さが約37kmの環状線は、街の中心部を取り囲み、そしてベルリンのクラブシーンの中でも最もへんぴなスポットの数々を結びつけている。北西部には、かつてBoiler Room Berlinのホームとして知られていたStattbad(同ヴェニューは2015年5月に閉店している)、東部には://about blankやSalon Zur Wilden Renateが位置する。ノイケルン地区の線路のすぐ外側にヒッソリと佇むGriessmühleもまた、これらのヴェニューと同様、リラックスしていながらもフロンティア精神が感じられるクラブだ。Griessmühleの屋外スペースは、夏の間は不良な大人達の遊び場となる。しかし、元工場ならではの内装も手伝って、この場所には単なるアフターアワーズ・ヴェニュー以上の魅力がある。サブウーファーを備えた、天井が高く広々としたメインフロアは、圧巻の一言。また、踊り疲れたクラウドが休憩することのできる、小上がりのスペースもある。UKのベストアーティスト2組を招聘したMothers Finest主催の本イベントは、ベルリンでこの手の音楽を聴くのに、Griessmühleが最適な場所の1つであるということを証明した。 しかし、正確には「この手の音楽」というのが何なのかは、ハッキリとしていなかった。早い時間に登場したUntoldはここ最近、ハードテクノからUKベース、そして2014年のデビューアルバムで披露したしゃがれたノイズまで、あらゆる音楽を手がけている。目新しいことを得意とするアーティストらしく、彼はこの日、ダブステップのサブプレッシャー、ガラージのスウィング、ジャングルやUKファンキーのシンコペーションといったここ20年間のアイデアを、ビッグルームにも対応できるような轟くテクノイドフォームへと昇華させた、UKの最新異系サウンドにフォーカスしていたが、奇妙そのものであった。 このようなスタイルを代表するのが、Livity Soundクルーによる楽曲である。Joeの"Studio Power On""Slope"、Pangaeaによる強烈な"Hex"といったベースアンセムが投下されたが、その不思議な素晴らしさは、この日のクラウドにはあまりハマらなかったようだ。イギリス人DJの中には、ベルリンでは日常茶飯事なロングセットをやり遂げることのできないDJもいるが、プレイ開始から3時間程が経過した頃、Untoldは満員のフロアに完ぺきにフィットする、ダークで激しいテクノサウンドにフォーカスし始めた。短いブレイクダウンの間、ある男性客が突然両手を上げた。それが多幸感からなのか、恐ろしさからなのかは定かではなかったが。 Shackletonに関して言えば、賢明なブッキングだった。彼のライブセットはここ数年大きな変化がなく、この日のセットからもサプライズ的な要素を見つけるのは難しかった。おそらく、ループするオルガンやエスニックなサンプルパックの間にいくつかボイスが追加されていたと思われるが、リズムの方は相変わらず奇妙で不規則、そして非常に細かいアレンジメントがなされていた。彼がそこで行なっていたのは、古くさいAbletonスタイルによるループの組み替えだったのだが、それもShackletonの手にかかるとアートフォームとなってしまう。刻一刻と変わっていくディテールはさすがの内容で、緊張感と開放感のバランスが完ぺきに取られていた。そしてもちろん、ベースもしっかりと鳴っていた。筆者の立っていた場所からは、巨大なサブウーファーの1つに置かれていた飲み残しのビール瓶が、床と共にジリジリと振動している様子が見えた。
RA