Various - I Have A Question

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  • Nina Kravizのレーベルтрип(トリップ)は始動から1年間で2枚組のコンピレーションEPを3タイトル、そして、大ヒットシングルを1枚リリースしている。その音楽観はレーベル名から一目瞭然だ。少しサイケデリックで、ループを基調とし、どんな状況でも機能する - 先のEPはどれもKravizのレコードバッグを垣間見ているかのようだ。というのも、新旧のお気に入りアーティストたちから集めてきたトラックと一緒に彼女自身のトラックも一緒に聞くことができるからだ。実践面で考えると、どのEPもテクノDJにとって十得ナイフのように便利だ。派手目のトラックや、深い時間のセットで意識を飛ばすような変化球、時にはピークタイムで使える強力なフックにも繋げていける、骨格剥き出しのトラックが収録されている。4タイトル目となる今回のEP「I Have A Question」は型にはまった内容ながら、そこに不満を訴えるのはバカバカしいほど密室的で力強く仕上がっている。 「I Have A Question」は前作「Ivan, Come On! Unlock The Box」(英語サイト)の付随作のような印象で、いくつかのパフォーマンスをアンコール的にフィーチャーしている。"Sound 6"と共にレーベルに帰還したK-Handは、前作の"The Box"の狂乱ぶりを抑制し、引き締まったテクノを披露している。続く"Hair Like String Like A Harp"で颯爽と登場するのはVladimir Dubyshkinだ。ワイヤーのように細くしなやかに分裂したトラックは、これまでтрипで聞いてきたトラックと同様、素晴らしくいびつだ。 本作では作為のある奇妙さが狙いのようだ。Kravizの"Let's Do It"には、彼女が先月カバーした"I Believe I Can Fly"に似た魅力を持つ巨大冷凍室の雰囲気が漂っている。おどけたスタイルで本作のオープニングを飾るRoma Zuckermanの"I Have A Question"にも彼女は登場している。Zuckermanのリズムは病的かつ原始的だが、ボーカルはピッチダウンされてしわがれている。安っぽい映画にありがちなバッドトリップシーンのイメージだ。Kravizのセット内なら驚きの効果を発揮しそうだが、そんな印象が無ければ、単にやり過ぎなトラックになっていただろう。 このコンピレーションに収録されているのは幻覚を誘発したり、意識を弛緩させたりするトラックばかりではない。例えば、Fred PやDJ Sodeyamaは芯のあるがっしりとしたアレンジを行っており、後者の"Miles Pt. 2"では非常に重々しく処理した声をフィーチャーして見事な効果を生み出している。трипのスター的存在に台頭しつつあるBjarkiは、"PC Muscles"にて唸るドラムと卒倒してしまいそうになるメロディをバランス良く組み合わせている。そして、Population One名義で参加したTerrence Dixonが提供したのは、трипの第一弾リリース「The Deviant Octopus」でのアレンジを彷彿とさせるウォブリーなトラックだ。今ではтрипからどんなサウンドが届くのか分かるようになった。「I Have A Question」はそのイメージにぴったりの内容だ。新規のレーベルという特別感はもう本作には無いのかもしれない。しかし、そこでできあがったのは、テクノ界最高峰の異質性を持つKravizによる監修のもと、極めていびつなテクノをまとめた見事なコレクションだ。
  • Tracklist
      A1 Roma Zuckerman - I Have A Question A2 Population One - Escape B1 Nina Kraviz - Let’s Do It B2 Bjarki - PC Muscles C1 DJ Sodeyama - Miles Pt.2 C2 Fred P - Higher Mentalism (Edit) D1 K-HAND - Sound 6 D2 Vladimir Dubyshkin - Hair Like String Like a Harp
RA