Len Leise - Lingua Franca

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  • 昨年、Len Leiseが発表したEP「Music For Forests」にまつわるふたつの話が出回った。そのひとつはEPをリリースしたレーベルInternational Feelから発せられた話で、作品を手掛けたのはオーストラリアの業務用音源制作者であり、レーベルのトップMark Barrottがパリにあるレコード店のバーゲンコーナーで、その人物のテープ作品『Songs For Sunsets』を発見したということ。もうひとつはBarrottが偽名で制作した作品なのではないかということ。真実である可能性はいずれにもあった。柔らかなパーカッション、騒めく熱帯雨林の音、そして、光を放つ虹色の音色は、カバーデザインにイルカやオームの書体を使用したニューエイジテープ作品の一部であってもおかしくなかったし、一方でそのサウンドは、Barrottのアルバム『Sketches From An Island』におけるパチョリの模様をした部分と全く同じものだった。 しかし現在、作者がBarrottである可能性は否定されている(Len LeiseのFacebookページが本物だと信じるならば、の話だが)。Leiseは20分間に渡るエレクトロニカトラック2曲を収録したテープ作品『M Of M』にて、淡いバレアリックサウンド以外の音楽も制作できることを示した。しかし、International Feelのミニアルバムシリーズ(英語サイト)第一弾となる「Lingua Franca」では、再びBarrottの路線を追いかけている彼の姿が見受けられる。収録されたトラック7曲は、世界を巡る旅としてまとめられており、ロシア、インド、モロッコなど、多くの国々からの影響を存分に含んでいる。 どのトラックも心地よく解き放たれている。"Forlorn Fields"では、ぼんやりと鳴る東洋の鐘のサウンドカーテンに隠れて、ベースラインが密かに蠢いている。"Leaving Llucmajor"のパンニング効果は、じっとりとした浜辺の小屋を吹き抜ける潮風のようだ。"Route To Reutov"で用いられているきらびやかなサックスソロは、高額なカクテルとマンハッタンの高層ビルからの眺めと一緒に楽しむのが最適だ。しかし、これまで滅多に近寄ることの無かった領域、つまり、ダンスフロアの領域にLeiseの姿を目にするトラックも数曲含まれている。先日発表された12インチ「Edits 001」では、彼はジャジーなディープハウスに踏み込んでいたが、"O Caminho"では、Idjut Boysがプレイしている光景が思い浮かぶようなダブディスコに飛び込んでいる。"Tria Bells"で用いられているベースラインはダブルのエスプレッソよりもパンチがあるが、心臓の鼓動が速まる時間はそれほど長くない。最後の"El Modelo"で安らかな状態に再び誘われるからだ。
  • Tracklist
      A1 Forlorn Fields A2 Leaving Llucmajor A3 Route To Reutov A4 Mandala Maksim B1 O Caminho B2 Tria Bells B3 El Modelo
RA