Stanislav Tolkachev - What Are You Thinking About, Little Duck?

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  • Stanislav Tolkachevの音楽について文章を書くのは、常に困難だ。突出した作品のクオリティは別にして、ウクライナを拠点に活動するアーティストである彼を、これほどまで魅力的な存在にしているのは、感情を表現する彼のセンスだ。筆者にとって、似通ったサウンドで構築されるテクノよりも、Tolkachevの作品がテクノらしく感じられる理由をズバリ言い表すのは難しい。彼が生み出す歯切れのいいシンセやサイケデリックなサウンドスケープについて、延々と議論を交わすこともできるだろうが、他にも無数のプロデューサーたちがそうした要素を使っていても、彼のように感動的な結果を出すことは少ない。 もしかするとそれは、Tolkachevが「テクノ」であることに無頓着なことと関係があるのかもしれない。10年前にデビューして以来、彼は20近くのレーベルからリリースを重ねてきたが、その多くはそれまで聞いたことがないものだった。彼のディスコグラフィーを見渡しても顕著な違いは一切見受けられない。彼は最良のトラックを知名度の高いプロジェクトのために取っておくことはせず、むしろ、彼のトラックをリリースすることになるのがどんなレーベルであっても、その適切なレーベルを通じて、途切れるこついて関して打算的に映るものは無く、それにより彼は、同類のアーティストたちの大半と一線を画している。 そして、彼の最新作として登場するのが「What Are You Thinking About, Little Duck?」だ。Gost Zvukの新たなサブレーベルGost Instrumentに到着した2曲入りの10インチは、ビートレストラック1曲と、従来型のテクノトラック1曲から構成されている。"Optical Illusions"は、多くの人が惹き込まれるであろうビートレストラックだ。M_REC LTD(英語サイト)やSemanticaからのDJフレンドリーなリリースに別路線として収録される傑作アンビエントと同じように、このAサイドも活性が高く、トリッピーで、フィーリングに溢れている。"Optical Illusions"は後半になると、陶酔感を伴いながら内へと吸引される眩いシンセが重ね合わされる。逆サイドの"Suddenly I Realised"では、ドラムと小刻みなメロディにより、テクノの領域におけるダークな部分に迫っている。特段クラブ仕様である訳ではないが、Tolkachevというパズルにおいて、心を鷲掴むピースとなっている。
  • Tracklist
      A1 Optical Illusions B1 Suddenly I Realised
RA