Roland - SYSTEM-100

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  • Rolandの1970年代のクラシックシンセのファンだが、完動品に大金をつぎ込む余裕がないという人は、Rolandの最新のPLUG-OUTをチェックすべきだろう。PLUG-OUTは現在4種類がリリースされており、その中最新製品が1975年にリリースされたセミモジュラーシンセ、SYSTEM-100を再現したSYSTEM-100 PLUG-OUTだ。オリジナルのSYSTEM-100はModel 101のキーボード付きシンセ本体に、オシレーター、フィルター、サンプル&ホールド、リングモジュレーターを本体に追加するユニットのエキスパンダー(Model 102)、シーケンサー(Model 104)、オーディオミキサー(Model 103)の3種類(スピーカーを加えると4種類)のユニットを自由に組み合わせられる製品だった。 今回紹介するSYSTEM 100 PLUG-OUTは、そのオリジナルのデザインをベースにしながらModel 101とModel 102のみを再現した新しいシンセと言うべき機材で、オシレーター(2基)、ノイズ・ジェネレーター、LFO(2基)、独立したADSRが備わったVCFとVCA、そしてModel 102のサンプル&ホールドとリングモジュレーターを加えたものだ。そしてこれらのどのコンポーネントにもCVインプット/アウトプットが備わっており、オリジナルに似たレトロなデザインとフィーリングを提供している。CVはGUIのバーチャルパッチ経由で接続可能で、SH-101のような一般的な構造のシンセでは生み出せないようなユニークな音声合成が行えるようになっている。また、SYSTEM-1mを所有している場合は、そのモジュラージャックを使ったパッチングも可能だ。 SYSTEM-100 PLUG-OUTのインストール方法は基本的に同社の他のPLUG-OUTと同じで、フリートライアルのインストールからスタートする。厄介なことにこの時点ではインストール先のフォルダの選択が不可能だが、筆者の場合はその後問題なく自分の好きな場所にフォルダを移動できた。このフリートライアルは14日間で、期限が過ぎると正規に購入しない限りサウンドが歪む、またはヴォリュームが下がるようになっている。 実際に立ち上げてみると、まずは往年のSYSTEM-100のグリーングレーとブラックのフロントパネルを基調にしたインターフェイスが目に入る。その最上部にはプリセットの選択をはじめ、パッチングやセッティング、オプションのポップアップメニューを表示する各種ボタンが備わっている。今回のテストはまずBitwig Studio 1.3で試してみたが、動作しないポップアップがあったため再確認してみると、残念ながら現時点ではBitwig Studioがサポート外であることが明らかになった。そこでLive 9で改めて試してみると、今度はすべての機能が問題なく動作した。個人的にはオプションのポップアップが正常に動作したのが嬉しかった。縦横の比率がオリジナルに正確な形で再現されているこのPLUG-OUTはかなりコンパクトで各種コントロールも比例して小さく表示されるので、GUIを200%まで拡大できるかどうかは非常に重要だ。 SYSTEM-100 PLUG-OUTのデザインチームは、オリジナルが比較的複雑なデザインであることから、再現するにあたりヴィジュアル面のサポートを強化して分かりやすくする必要があったことを理解していたのだろう。今回の製品にはSignal Flowという専用のボタンが配置されており、CVのインプット/アウトプットジャックが色分けされて表示される他、入力信号の流れも矢印で表示できる。このSignal Flowは信号の流れを内部接続も含めて表示する機能なので、使い続ければオリジナル未体験のミュージシャンたちも直感的に扱えるようになるはずだ。また、もうひとつのヴィジュアル的な特徴としては、左下のルーティングマトリックスが挙げられる。これはあの有名なEMS Synthiのように、ピンを使ってグリッドを指定することでCVのルーティングを行える機能だ。ルックスも良く、パッチングのスピードアップも期待できそうだが、本製品にはやや不似合いに感じられた。 所謂「プラグイン」に投資する価値があるのかないのかという議論は良く見かけるが、この製品の一番の特徴は、SYSTEM-1の上に「プラグアウト」して、コンピュータを介さず単体で使用できるという点にある。筆者もSYSTEM-1上で使用してみたが、その結果は満足できるものだった。Roland独自のテクノロジーとして知られるACBのアルゴリズムはオリジナルのサウンドの特製を見事に捉えており、通常のバーチャルアナログシンセよりもアナログ的なフィーリングが得られた。しかし、プラグアウトで使用する場合は、SYSTEM-1のレイアウト上の問題からいくつかの機能が使用できなくなる。具体的に言えば、2基目のLFOやサンプル&ホールドは使用できない。個人的にはSYSTEM-100の特徴のひとつで、擬似ランダムシーケンスのソースとして活用できるサンプル&ホールドが使用できない点を特に残念に感じた。 しかしながら、SYSTEM-100 PLUG-OUTはこれまでテストしてきた他のプラグインよりも優れているという印象で、オリジナルの優れたデザインのお陰もあり、かなりディープに作り込めるサウンドには驚かされた。優れたサウンドのPLUG-OUTを探していて、コンピュータ上の作業もある程度は疎まないというSYSTEM-1ユーザーは、今回のSYSTEM-100 PLUG-OUTは試してみる価値があるだろう。 Ratings: Sound: 4.8 Cost: 4.0 Versatility: 4.1 Ease of use: 4.1
RA