Nicolas Jaar - Fight

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  • 突如、Darkside解散のニュースが発表された時、それは思い切った決断に思えた。しかしそれは同時に、必要なきっかけだったのかもしれない。Nicolas Jaarが自ら率いるスペーシーなロックバンド、Darksideを断念してからというもの、彼は自身のキャリアにおいてトップクラスの音楽を発表してきた。その相次ぐ活動はすべて、彼が素晴らしいものを備えた早熟のティーンネイジャーであった頃を思わせた。『The Color Of Pomegranates』に向けて制作された、時に華々しく、時に当惑させるサウンドトラックに加え、彼は「Nymphs」と名付けた傑作シリーズを通じて制作を続けている。今回、R&Sからお目見えとなる同シリーズの第4弾では、これまでと同様に揃えられたサウンドがテクノの影響下にあるタイトな枠組みで提示されている。 これまでの「Nymphs」シリーズに収録されてきたトラックと同様、"Fight"も尺が長い。9分に及ぶこのトラックは、その尺を使って、いかなる場所にも展開していく。今回はなめらかなコード上を滑っているが、その油のごとき輝きは初期のHessle Audioを指し示している。アンビエント素材に颯爽と出入りする"Fight"は、ブレイクが訪れるまで何かを出し惜しみし、常に私たちをからかっているかのように感じられる。ブレイクはいつも通り、Jaarによる半分くぐもったボーカルによって高揚し、その後、驚くほど攻撃的なフェーズに突入していく。しかし、この展開さえ、Jaar独自のよそよそしさにより和らげられており、"Fight"を鋭く曲がりくねる迷宮の中に送り込まれたテクノのように感じさせる。現在、彼はノリに乗っており、興奮してほとばしる"Fight"は、その感覚を強調している。しかしそれは同時に、入念に制作された奇抜なトラックでもある。Jaarは探求的な性格により、自らの最良部分を引き出せるのだが、本作ではそれが最も良く表れている。
  • Tracklist
      A1 Fight (Nymphs IV)
RA