- 今年初めにフランスのレーベルAntinoteからデビューを飾ったInoue Shirabeは、日本の岡山から登場してきたニューカマーだ。そのデビュー作には完ぺきなまでにトリッピーでジグザグにくねるアナログハウスのメロディと、サイケデリックジャムによる2曲が収録されていた。Inoueはそれに続く本12インチでも辺境に居続けているが、今回はデビュー作を逆さにして溶かしたようなスリーブデザインと同様、スローモーションで揺らぐテンポが提供されている。
収録曲は共に、輝く小さな球体のように飛び散るブリーピーな装飾音と澱んだドラムを中心に構築されている。この空間において、Inoueはふたつのジャンルによる音楽旅行を紐解いていく。"Down Into The Black Church"は石のように冷たく、切り刻まれたレーザーと銀色に輝くコードが旋回しながら広大な宇宙へと向かう。しかし、柔らかなベースラインがそれを地球へと繋ぎとめている。その道中、かわいらしい要素がチラチラと姿を現し始めるが、最終的に奇妙な形へと変化していく。際立った特徴が少なくなった"Camping In Your Soul"も似た内容だが、こちらは熱量が増している。ビートはより激しく打ち込まれ、シンセは閃光のごとく瞬時に過ぎ去っていく。本作はInoueのデビュー作に比べると奇抜さが少なくなっているが、よりディープな陰影が彼に上手くハマっている。
TracklistA1 Down Into The Black Church
B1 Camping In Your Soul