Masayoshi Fujita - Apologues

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  • ベルリンを拠点にするビブラフォン奏者Masayoshi Fujitaは、人気急上昇中のアーティストだ。Erased Tapesに提供したファーストアルバム『Apologues』を聞いていると、その理由が容易に理解できる。コンポーザーでありマルチ奏者であるFujitaが自身でアレンジしたストリングスやウッドウィンドで肉付けした波打ちきらめく作品は、純粋無垢な印象だ。穏やかで精神的に洗い流され、最初は人懐っこく感じられる。 自然に触発されるFujitaは、リスナーの想像力に光景を浮かび上がらせようとする絵画的ミュージシャンであり、彼は落ち着きを払いながらそれを行っている。"Swallow Flies High In The May Sky"というタイトルを知らなくても、上昇するストリングスとクラリネットの周りをループするビブラフォンを聞けば、雪を頂く山々の青く晴れた上空で旋回する鳥たちを思い浮かべることができる。もっと性急な"Flag"と同じく、物質社会の手ごわい現実に縛られない嬉々とした動きや解放、そして、自由といったムードが流れている。 こうしたポジティブさは素晴らしいのだが、Fujitaの音楽には影がなく、興味深さが失われる原因になっている。"Tears Of Unicorn"での少し辛辣なストリングスにより、メランコリーな色彩が少し生まれているが、こうした状況における燦々としたビブラフォンは陽気な部外者にしか聞こえない。同様に、"Requiem"での霧がかり空気のように浮遊する音色は、夜の墓場を暗示しているのかもしれないが、その悲しみはバルサ材のように軽く聞こえる。 ビブラフォンを使うFujitaが難なく伝えられる感情は狭い範囲に限られており、『Apologues』は平凡に聞こえることが多々ある。特に"Moonlight"と"Knight And Spirit Of Lake"がそれにあたる。その原因が彼のスタイル、もしくは、楽器選びにあるのかは明らかではないが、Fujitaのきらびやかなサウンドがダークなテクスチャーに悪影響を及ぼしている場面を思い浮かべるのは難しくない。コントラストが一切無いため、彼のビブラフォンはぼんやりと笑っている印象で、まるで鎮静剤を大量に打たれたかのようだ。
  • Tracklist
      01. Tears Of Unicorn 02. Moonlight 03. Swallow Flies High In The May Sky 04. Beautiful Shimmer 05. Flag 06. Knight And Spirit Of Lake 07. Puppet's Strange Dream Circus Band 08. Requiem
RA