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Sea of green '15
Published
Nov 2, 2015
Words
Riku Sugimoto
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2002年以来、関西圏を拠点に各地でパーティー・フェスを開催しているsea of green。2015年は、福井県の麻那姫湖青少年旅行村にて開催となった。ニホンザルや鹿の群れが姿を見せる、豊かな自然に囲まれた山道を越えて現地に赴いてみると、山間部の巨大なキャンプ場に、吊り下げのラインアレイスピーカーを設け、流木でデコレーションされたステージが見えてきた。サウンドのクオリティにも期待が高まり、そして“非日常”に浸れそうな雰囲気も充分に感じることが出来る環境だ。 1番手は大阪のDJ Mighty Mars。レゲエライクなダウンテンポやA.T.C.Q.などミドルスクールのヒップホップを中心としたセット、チルなスタイルが会場の緩い雰囲気にフィットしていた。Fila Brazillia名義で 90年代から活躍するSteve CobbyはGrace Jonesにはじまり、洒脱なムードのブレイクビーツから、ジャジーでファンキーなテイストを残してハウスグルーヴに移行。UKらしい捻ったセンスも見せつつ、ラストはStevie Wonderで夢心地な締め。続いて、USインディーズ感のあるバンドサウンドを披露したnever young beachから始まり、0時以降まで邦楽シーンでも話題をさらうユニットがライブを披露した。筆者は深夜から朝にかけてのダンスアクトに向け一休みしていたものの、合間に聞こえる歓声からはこの晩の盛り上がりを感じることが出来た。
一転して、冷え込んだ空気に映える高解像度なビートと、BPMに同期した抽象的なヴィジュアルで観衆を魅了したMouse on Mars。自らのアプリ「WretchUp」「Elastic Drums」を使用したと思われる、ソリッドかつ目まぐるしいほどの酩酊感をもたらすグルーヴで、テンポや拍の枠組みからも解き放たれたユニークなライブを披露してくれた。続くDJ Hellもドイツを代表するベテランアーティスト。持ち味と言えるジャーマン・ニューウェーブ的なサウンドからスタートし、一瞬で彼の世界観へと引き込んでいく。フリーキーなシカゴ・アシッドハウスからストイックなテクノ、どこかいなたさを感じさせるディープハウスまで縦横無尽にミックスする、HellのDJでしか聞けない音楽が凝縮された2時間であった。続くYoshinori Sunaharaは、よりタイトなモダン・テックハウスに移行。デジタルな感触の出音も、巧みなミックスによってダンスミュージックの機能性を際立たせる。絶妙なテンションで走りぬけつつ、ラストは懐かしいKorsakow “Deep in space”で着地。一日目のダンスフロアを締めくくるChris Cocoは、ディープハウスを軸に置いたセットを披露。朝日が登る時間帯にフィットするような、透明感のあるシンセフレーズが心地よく鳴り響く、極上の時間を届けてくれた。
陽のあたたかさが十分に感じられるようになるまで、やや長めのインターバルを経た後、環ROY×蓮沼執太×U-zhaanのライブが始まった。快活で自由気ままに言葉を紡いでいく環ROY、タブラの伸びやかなサウンドを自在に打ち鳴らすU-zhaan、そして二人の個性を取りまとめるような蓮沼執太のキーボードも、山間の空気に溶け合うようで心地よい。演目もその場で決めていく、真にフリーフォームなライブはこのイベントにぴったりだったように感じた。そして、演者とオーディエンスの距離の近さがこのフェスのムードを形成していると再認識できた。時間は昼を回り、終盤のダンスステージに向けKABUTOがDJをスタート。タフなキックのグルーヴにレゾナンスの効いたベースと浮遊感ある上物まで、グルーヴの軸を保ちつつも幅広い展開の中でフロアの空気を探り、掘り下げていくようなプレイで徐々に空気を創っていく。続くEinzelkindはよりスムースかつ大振りなミックスで勢いを出していく。後半は近年の欧州シーンの影響を感じさせるブレイクビーツの展開も。木陰が広がるとともに踊る人々の数も増す中、ライブで出演となったChristian Burkhardtはヘビーな低域を軸としたハウスグルーヴを途切れさせることなく展開する。ラップトップのみならずTB-303も持ち込みつつ、さりげない展開も刺激的なひたすら踊れるセットであった。ラストを飾るのはノルウェーのニューディスコシーンを牽引するPrins Thomas。これまでの流れを汲んだ、ユーモラスなテックハウスで始まったDJを聴きつつ、都内へと戻るべく準備を終え、名残を惜しみつつも会場を後にした。
紅葉のシーズンを迎え色鮮やかな山々に囲まれた、広大なロケーションにまずは驚かされた。広々としたキャンプサイトの中で来場者は自由にテントを貼り、フードや音楽を楽しむためにステージのある中央部へと行き来していたようだ。フロアは100名程度の規模でそこまで大きくはないものの、ラインスピーカーがかなり広範囲に音を飛ばしていたため、テントから少し出るだけでも各アクトの音楽を楽しめた。一方、4つ打ちのDJタイムがやや深い時間からで、その後もライブによる区切りの時間があったため、フロアで音に没頭するというよりは、マイペースに聴き、踊るオーディエンスが多かったように思えた。だからこそ気ままにキャンプを楽しみつつ、その傍らに贅沢な音楽があるようなシチュエーションを楽しむことができたとも言える。物理的にも気持ちの面でも窮屈さのない、まさに主催側が狙った「遊びやすさ」を感じられた。1ステージで多彩なジャンルのアクトが入れ替わりライブ/DJを行う中で、統一感あるサウンドで楽しめたのは、やはりPAの手腕によるところも大きいだろう。国内外のベテラン~若手まで終結した贅沢な出演陣、会場の規模感など、細部に至るまで確かなクオリティを確保してこそ、自由に楽しめる場を創ることが出来たのだろう。様々な野外イベント・フェスがある中でも、とびきり開放的で緩やかに楽しめるという点で、sea of greenが一つのカラーを確立していることは間違いない。
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