Battles - La Di Da Di

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  • マスロックというジャンル名には、他に勝るとも劣らないいかがわしさが常につきまとってきたが、少なくとも、言葉の意味ではつじつまが合っている。マスロックと称される音楽は複雑で高度なロックミュージックの構造を持ち、その鮮明さと明確さから洗練された内部機能を思い浮かべるのは難しい。Don CaballeroやStorm & Stressといった先人たちと同様、Battlesも2004年のファーストEP以降、マスロックというタームにすっぽりと収まってきた。しかし、ニューヨークのスーパーグループである彼らがジャンルを超えて大成功を収めたのは、この音楽が持つ複雑さや、難解さ、そして、屈曲を、一般的と言えるようなサウンドへ見事に変換してみせたからだ。これまでに彼らがピークを迎えたのは、2007年の『Mirrored』だ。この作品において、彼らはマスロックが持つ不可解な方程式を示すのではなく、それを紐解いて誰でも理解することができるようにしたのだ。 それから8年間、オリジナルメンバーでありシンガーのTyondai Braxtonと袂を分かったBattlesは、コラボレーションによるボーカルを主軸に置いたセカンドアルバムをリリースし、そして、今回のインストゥルメンタルアルバム『La Di Da Di』で1周して元の場所に帰ってきた。「従来への帰還」- 彼らの最新作をそう称したくなる。なぜなら『Mirrored』と『Gloss Drop』(英語サイト)のDNAを引き継いだトラックが収録された12曲の中に少なからず含まれているからだ。とはいえ、Battlesにはあまりにも素晴らしい才能と挑戦的な姿勢があり、同じことを繰り返すのは相応しくない。Ian Williamsはシンセとギターの同時演奏を活用する密かな手法を新たに見い出し、秘密兵器のDave Konopkaはベース、ギター、ペダルボードを奇妙な形に混ぜ合わせている。そして、John Stanierは引き続きエネルギッシュなドラミングに磨きをかけている。しかし、『La Di Da Di』は結合感に乏しい。その問題はバンドの強みを過大に、そして、過少に打ち出している点に起因している。 リズム、ダイナミックなメロディ、サウンドマニピュレーション、いびつなリズム、ハーモニックな騒音、そして、急激な展開による迷宮こそ、Battlesが成せる最も優れた業だろう。この点は『La Di Da Di』でも聞くことができる。"Dot Net"はADHDの症状を持つ人が機械を誤って操作しているようなマシンファンクトラックだ。そして、"FF Bada"と"Summer Simmer"は共に、大量の微細なメロディとリズム要素からダンスフロアで機能する刺激的なアイデアを切り出している。後者のトラックは『Gloss Drop』での"White Electric"や、『Mirrored』に収録されていた"TIJ"における高まる密室度を彷彿とさせ、リスナーに楽曲が舞う姿を楽しんでもらうだけの余地を残すように抑制されている。"Non-Violence"のような楽曲では空気ががらりと変わる。ハーモニーによるけたたましい混沌と上昇気流に真っ向から飛び込んでいき、渦巻く高周波シンセと判別不可能なパーカッションを平面上に描き出している。曲中のノイズが今にもどこかに連れ去っていきそうな印象になっていれば、これほど余計に感じることはなかっただろう。 "Tyne Wear"や"Cacio E Pepe"といったインタールードと隣り合わせに聞くと、華美な要素がさらに際立つ。この両曲はBattlesのアルバムというコンテクスト上では原始的なまでに簡素に映る。この仕上がりは余りにも早急にまとめ過ぎた楽曲である場合が多い。彼らはこれまでそうした楽曲によって自分たちの作品を味付けしてきた(この点で最も満足のいく好例であり続けているのは、粗暴なトラック"Leyendecker"だ)。そしてそれは同時に『La Di Da Di』に関して「最もシンプルなアイデアが最も面白い」と告げている。おそらくだからこそ、『La Di Da Di』の大部分を通じて、彼らは最高潮主義(というものがあればの話だが)を見い出そうとしているように見えるのだろう。そう考えるとつじつまが合う。Battlesはアルバムをリリースするというより、科学の実験結果を発表しているかのようであり、私たちを驚かそうと前例の無い調合物を巧みに作り出して披露する。以前まで、それは謎めいた電子回路や卓越したエンジニアリング、そして、動的な可能性が詰まったガジェットを彼らが手渡すことを意味していた。しかし今回の作品で意味しているのは、より機能的で慣れ親しんだ手堅いものであるようだ。
  • Tracklist
      01. The Yabba 02. Dot Net 03. FF Bada 04. Summer Simmer 05. Cacio E Pepe 06. Non-Violence 07. Dot Com 08. Tyne Wear 09. Tricentennial 10. Megatouch 11. Flora > Fauna 12. Luu Le
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