- この2年間、Dennis McFarlane(Dego)は自身の作品により、新世代のプロデューサーの間で王者たる地位を確固たるものにしてきた。2002年にCousin Cockroach名義でプロデュースした強力なブロークンビーツ"This Ain't Tom And Jerry"は昨年、Berceuse Heroiqueから再発され、さらにFaltyDLのBlueberry RecordsとEgloを通じて新作が届けられたが、後者のリリースはキーボーディストであるKaidi Tathamとのコラボレーションだった。2015年には、Rush Hourとサインを交わした他(英語サイト)、Tathamと共にTheo ParrishのSound Signatureからもう1枚レコードを発表した。こうしたリリースすべてが下地となり、Degoにとって4年ぶりのソロアルバムとなる『The More Things Stay The Same』への道が切り開かれた。
McFarlaneは自身のキャリアを反芻する時期に差しかかっている。先日、彼は「歳を取ってすべてを見切ってしまった」とFACTに対し語っている(英語サイト)。複数のジャンルが萌芽し、ピークへと至って飽和し、消滅した数年後に再登場する、というサイクルを彼は目の当たりにしてきた。ジャングル、ドラム&ベース、ブロークンビーツ、その音楽が何であれ、彼は自身が手掛ける様々なプロジェクトを通じて挑戦的で新たな方向性にそうしたジャンルを後押ししてきた。
McFarlaneの2011年の前ソロアルバム『A Wha' Him Deh Pon?』と『The More Things Stay The Same』の重要な違いは、コラボレーションするボーカリストとスタイル面においてフォーカスを限定している点だ(Sharlene Hectorの声がほとんどのトラックで使われている)。彼の音楽の幅がとても広いことを考えれば、自らに課した今回の構造はおそらく好判断だろう。多くの一般的なブロークンビーツと同様、本作も親しみやすく、それと同時に、圧倒的と言ってもいいほど濃厚に仕上がっている。息をのむドラムパターンとベースラインを伴った今回の音楽は最新鋭で雑然としていて変化に富んでいるが、メロディとソウルのこもった歌声にも根付いている。
本作にはハッとさせられる素敵な瞬間がある。"Help Me Out"でのライブキーボードや、"It Don't Get No Better"での見事なピアノの旋律、そして、"Own It"での軽めに叩かれるボンゴなどだ。作品のピークは"We've Been Here Before"だ。ジャズの要素により躍動するスリリングなブロークンビーツはロンドンの夏独特の感覚を捉えることに成功している。しかし、McFarlaneのアレンジメントは時として猛々しいジャズフュージョン作品のように不可解にも成りうる。Degoのファンであればそうした複雑性を享受するのだろうが、彼のサウンドにそこまで興味を持っていない人にとっては受け入れがたいものになるだろう。McFarlaneは『The More Things Stay The Same』において特定のトレンドに迎合することを拒んでいる。それは彼がこれまで行ってきたことだ。McFarlaneが作ろうとしているのは現代的な音楽なのではない。普遍的な音楽なのだ。
Tracklist01. Feminist Meetings
02. Greed & Power
03. It Don't Get No Better
04. Keep It Moving Right
05. Own It
06. Shine A Light
07. Star Track 7
08. The Middle Ground feat. TY
09. We've Been Here Before
10. The Stronghold Of Lithius
11. The Writings Clear
12. Help Me Out
13. With Love