Zenker Brothers - Pollioni

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  • 去る2月、ドイツ人デュオZenker Brothersの傑作アルバム『Immersion』のレビューに際して、Matt Unicombは「彼らがレーベルを通じてリリースしてきた音楽の成果としては、『Immersion』にはそれほど変化は見られない」点を指摘していた。それとほぼ同じように、アルバム以来初となるコラボレーション作品「Pollioni」も、ひとつの確立された別作品というより、前作の付随物のように感じられる。そのようになるのは、特徴的で完成度の高い(そして言うまでもなく、広く愛されている)サウンドの副産物的結果と言えるだろう。そのため、インダストリアル級の力強い推進力を持ち、ディープでリズムにフォーカスしたテクノという、DarioとMarco(Zenker Brothers)が最も得意とするサウンドで制作を続けるにあたって、ふたりが失敗してしまう方が難しい。 「Pollioni」で唯一顕著な違いは、ふたりがメロディアスなタッチを切り落とした点だ。みずみずしいジャジーなピアノや、緊張感漂うサイファイなパッドは無くなってしまったが、残された空間が効果的に使われている。"Night Hustler"におけるのっしりとしたグルーヴは、悪質なムードを際立たせる無響のアルペジオをどっぷりと浴びている他、"Bias"では囁くようなメロディがトラックを通じて前後に移ろい続けているものの、グルーヴを促進するリズミカルなテクスチャーのように用いられている。 Ilian Tapeの関連アーティストであるPhilipp Von Bergmannがゲスト参加した"Karma Lounge"は、タイミングをずらしたミュートコードが異なる色彩を加えているにも関わらず、本作では最も印象の薄いトラックだ。出色の"Neunkeu"では、レイヴィーなシンセフェーズとアシッドサウンドのシーケンスを結び合わせてヘビーでパーカッシブな騒音を生み出しており、同じアプローチが上手く取られている。Zenker Brothersは自身が切磋琢磨して築き上げたテクノの構造から離れていくために「Pollioni」を作ったような印象を受ける。今回の結果に基づき、彼らがさらに改良を加える余地はまだまだ存分にありそうだ。
  • Tracklist
      A1 Night Hustler A2 Bias B1 Karma Lounge feat. Philipp Von Bergmann B2 Neunkeu
RA