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Nachtdigital 2015
Published
Sep 10, 2015
Words
Jordan Rothlein
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今年のNachtditigalの中で1番ヤバかったであろう瞬間を私は見逃してしまったのだが、それは同時に、今回のフェスの中で最も印象に残っている体験でもある。土曜の朝早く、メインステージで行われていた6時間に及ぶGieglingのショウケースの中、KonstantinによるマスタークラスのDJで踊り明かした後、これは一度休憩しないと厳しいと思い、フラフラになりながらキャンプサイトへと戻った。1時間少し経ってから、私はテントの外から聞こえてくる興奮ぎみのざわめき声で目が覚めた。その会話の内容からすると、Konstantinの後に登場した、Giegling独特のか細いハウスとテクノのサウンドを確立した張本人であるAteqが、どういうわけかSnap!による1992年のユーロダンス・クラシック“Rhythm Is A Dancer”をかけたようだった。筆者は寝袋から飛び出し、テントの外に頭を出してみると、同僚の1人が隣のテントに混ざっているのを発見した。 「それ本当?」と筆者は尋ねた。「Ateqがあの"“Rhythm Is A Dancer”をかけたって?」 「ああ」と、彼は残念そうに答えた。「俺も見逃したんだ。」 この一件には、Nachtdititalがいかに素晴らしいイベントなのかが要約されている。文句無しのDJセットに、予想外の展開、熱狂的なクラウド。そしてここでは睡眠というものが、体を休める行為ではなく、超越的な経験を逃す危険な行為となってしまう。そして、このドイツ南東部のオルガニッツにあるごく小さな町の郊外で毎年開催されているハチャメチャなウィークエンダーを、一般的なフェスティバルの成功基準で判断してはいけないということを、今回改めて思い知らされた。通常の判断基準となるフェスの要素、つまり音楽、演出、ロケーション、クラウドなどのクオリティが低いというわけでは決してない。ただ、Nachtdigitalでは、
あの人々
が
あの場所
で、
あの照明
の下で
あの音楽
を聴きに来るからこそ、不思議でありながらも素晴らしい空間が実現されるのだ。
18回目の開催となった今年のNachtdigitalは、過去にも増して最高だった。ブッカーたちは、数組のビッグネームをヘッドライナーに迎えるのではなく、魅惑的なB2Bの数々を実現させた。また今回のタイムテーブルは、このフェスティバルを二晩に渡るイベントというよりも、ずっと続く1つのパーティーのように感じさせた。湖の奥にある森を照らし、そしてメインステージをサイケデリックな幾何学模様の渦へと変化させたライティングとプロジェクションによって、異世界のような空間を演出していた。ペーパープログラム(ふざけたドイツ語表記のZINEだったが、思わずお土産に持ち帰りたくなるような内容だった)には、コンピューターで生成された、金歯を入れた両性具有のフィギュアが、裸で泳いだりフラフープしたり、マジックカーペットで飛んでいる画像が印刷されていた。また、今年はGEMAの手数料や、ドイツの
最低賃金の改訂
によってチケット価格が€99.95に値上げされたものの、Nachtdigitalは2015年のブランディングをガッチリと固めてきた。当然のことながら、クラウドは文句を言わずに全てを受け入れた。
言い方を変えれば、皆が一か八かやってみた結果、ほぼ全てが良い結果となったのだ。B2Bは全体的に素晴らしかった。この週末で最も期待されてたであろう組み合わせ、Ben UFOとProsumerは、土曜の夜に4時間の枠を与えられていた。セット序盤から、彼らの選曲は温かく、そして非常に独特だったが、お互いのDJに馴染むまでは幾ばくか時間がかかったようであった。しかし一度息が合うと、2人はそれぞれの総和に勝るほどの力を発揮。彼らのセットは、今回のフェスティバルの中でも一番クールな音楽の瞬間となった。(ProsumerがLisa "Left Eye" Lopesの
"The Block Party"
を投下した時のフロアの盛り上がりを想像してみてほしい。) 一方で、Lena Willikensと、フェスティバルのキュレーターであるSteffen Bennemannが本調子になるのには、ほとんど時間がかからなかった。金曜の夜、セカンドステージのオープニングを務めた彼らはゆっくりとテンポを上げていった。彼らのB2Bは、曲がどこで切り替わっているのかが全く分からなかったー例えソロのDJセットだったとしても、あれほどタイトで完ぺきなミックスはなかなかできないだろう。また、日曜朝のDitto BarntとJoy Orbisonによるセットは、まるで同じレコードバッグから選曲しているかのようであった。土曜と日曜のデイタイムのみオープンしていたとても小さなLakesideステージでは、Uncanny ValleyのCredit 00と、Usunovという人物(Credit 00のルームメイトとのことだ)が、極上のエレクトロ、ハウス、ディスコを織り交ぜ、前日までのメインステージでのセットの一部を凌ぐほどのプレイでフェスティバルを締めくくった。Helena HauffとI-fは、同じ雰囲気のトラックをかけることがほとんどなかった。Hauffがいくら荒々しいエレクトロを突っ込んでも、I-fはひたすらイタロのアンセムをプレイするのだ。だが、そんなことは全く問題にならなかった。これほどアドベンチャラスなプログラムでは、難局の1つや2つなど必ず出くわすだろう。しかし、それごときで、そこまでの28時間で積み上げられてきたグッド・フィーリングは崩れやしないのだ。
一方のソロパフォーマーたちも、上述のB2Bセットの数々に劣らずアドベンチャラス。土曜朝のKonstantinのプレイは、個人的に2015年に入ってから聞いてきたDJセットの中で1番の素晴らしさだった。Prince Of Denmarkの未発表トラックからスタートしたセットは、Octave Oneの"Blackwater"で雰囲気がガラリと変わり、そこからは温かくエモーショナルなハウスとテクノを展開していった。その日、夕方の早い時間には、Traxxが約30分間キックドラムの音だけを鳴らしていた。彼は徐々にサイケデリックなギターと奇妙なジャズのテクスチャーを加えていき、ある瞬間に突如アシッドハウス・チューンを投下した。ライブセットはというと、筆者の中でのベストアクトはMap.acheであった。メインステージでのサンセットの時間帯を担当するにしては驚くほど派手なプレイであったが、彼の温かく、複雑なテクスチャーのハウスサウンドで、Ben UFOとProsumerが登場する前のステージを大きく盛り上げた。僅差で2位だったのは、前日の夜に同じステージに出演したAndy Stott。この日のセットは、筆者が今まで見た彼のセットの中でも最も狂気に満ち、そして自由な内容であった。
この週末で唯一気になったマイナス点は、筆者が金曜夜の早い時間に捕まってしまった、Tentステージに入る為の行列だ。ともあれ、テント内のデコレーションは、昨年のクラブっぽいそれよりも遥かに良くなっており、屋根には複雑なライティング・インスタレーションが施され、ダンスフロアの端には階段状の台が積み上げられていた。しかし、これによってキャパシティが縮小されてしまい、結果としてエントランスでの渋滞に繋がってしまったようだ。トイレに行きたかったり他のステージをチラリと覗きたかったような場合でも、テントに戻るには再び長時間待たなければならなかった。とりわけステージが1つか2つしかないフェスティバルでは、セットを見逃してしまうのは非常に悔しいものだ。しかし、この行列問題は、金曜日のTentステージのラインナップがいかに強力であったかを物語っているということも記しておきたい。正直に言うと、筆者はレビューの為にメモしていたから行列について覚えているだけなのだ。それ以外は、Nachtdigitalでしか経験することのできない、疲れ知らずのヴァイブスがあっという間に過ぎ去っていく週末だった。
Photo credit:
Cinemata
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