Frank & Tony - The Gales

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  • 昨年、ニューヨークの2人組、Frank & TonyがシリーズもののEPとしてリリースし、後にLPとしてまとめられた『You Go Girl』(英語サイト)は、熱狂的で圧倒的なサウンドで興奮を巻き起こした。暗闇と熱烈なベースラインを散りばめた音楽には、ディテールとメランコリアに対する好みが表れていた。Frank & Tonyはこれまで自身のレーベルであるScissor & Threadのみから作品をリリースしてきていたが、「The Gales」はMule Musiqから発表されることになった。日本で長く運営されているMule Musiqは、Kuniyuki、Lawrence、Fred P、DJ Sprinkles(彼は『You Go Girl』にも登場していた)らによるディープで流れるようなエレクトロニックミュージックを好んでいることもあり、ふたりにとってぴったりのレーベルだ。Frank & Tonyの過去作品の方が「The Gales」に比べて感情を掻き立てられるものではあるが、本作は彼らふたりとレーベルの両方に期待する特徴的なサウンドを聞かせてくれる。 ナイトライフにおけるダークな方向性に今回の12インチはぴったりだ。中でも傑出したトラック"Amadeo"を聞けば特に明らかだ。悲しげなピアノと月に照らされたパッドをブレンドし、漂うようなビートに併せて展開している。タイトルトラックの"The Gales"では、シンプルな4つ打ちリズムの周囲を曲がりくねる気怠いキーボードと、濁らせた低域の音色が使われているが、そのサウンドは比較的、味気無い。『You Go Girl』にも登場していた"Only By Moving"では、Frank & Tonyお得意のじわじわと攻める路線に立ち返っている。本作のバージョンでは、身体に直接訴えかけてくる鼓動だけになるまで素材を削ぎ落し、極めて内向的な感覚が生み出されている。このトラックのすべてを感じきるには意識を完全に没頭させなければならないが、眩暈を起こしそうになるアレンジではないため、そのロウなサウンドには十分に意識を惹きつけられる。
  • Tracklist
      A1 Amedeo A2 The Gales B1 Only By Moving
RA