Jack J - Thirstin'

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  • Pender Street SteppersのメンバーJack Jussonは昨年、ソロ作「Looking Forward To You」を発表し、Moodhutを大躍進させた。バンクーバーのレーベルでMoodhutの音楽は控えめで人々の意識を引くものでは滅多にないが、Jutsonの気だるいディープハウスが持つ魅力は、抗えないほど壮麗だ。以降、Moodhutクルーによる音楽は至る所から現れ続けており、その中にはJustsonとPender Street SteppersのパートナーであるLiam Butlerによる傑作12インチも含まれる。そして、Jack Jが最後にEPをリリースしてから約1年を経て、Justsonが再びソロ作をリリースする。今回は、音楽観を共にするレーベルFuture Timesからの発表となる。夏場のパーティーの深い時間にプレイされることを照準に定めた「Thirstin'」は前作同様、あらゆる点において魅力的だ。 Jutsonの長所のひとつは、悪い影響をサウンドに与えることなく、容易く気楽にやってのけているような印象を生み出すところだ。"Thirstin'"も例外ではなく、ここ数年で最もリラックスしたサウンドセッションが聞けるハウストラックだ。重ね合わされたハンドパーカッションは無重力に感じられるが、躍動感は損なわれていない。またミュート状態での演奏音が要所要所を上手く突いており、絶妙なダブエフェクトによってトラックの勢いが増し、最後はJutson自身による控えめながらもキャッチーな歌で締めくくっている。しかし、"Thirstin'"が素晴らしいのはその隠し味であるジグザグ状のベースラインで、彼のメロディアスなリードパートよりも歌い上げているような印象を受ける。そして、"Thurstin'"には巨大なディスコベースラインが加えられと、ボーカルと同様、いつまでも聞き続けていたくなる展開を繰り出していく。最近分かったことだが、ゆったりとした処理にも関わらず、新たな領域を切り拓いていくのは、こういうサウンドなのだろう。 「Atmosphère」は、まだ聞いたことのないオリジナルチューンのダブバージョンのようなインストトラックだ。このトラックでフォーカスが当てられているのは表現豊かなピアノ演奏だが、キラーなベース演奏を伴ったファンキーなリズムセクションがトラックの面白みを保ちながらピアノを支えている。トラックのクリーンな旋律と誰にも邪魔されることのない伸び伸びとしたリズムが、若干ではあるが、初期のハウストラックを作ろうとしていたSteely Danのように聞こえ、時代を跨ぐ試金石とでも言える要素を、しっかりと結び付き合った一貫したものへと繋ぎ合わせた『Looking Forward To You』での鋭敏な手腕を思い出させてくれる。「Thirstin'」ではさらにシームレスな融合が実現されている。そして我々のもとに届けられたのは2015年の夏を席巻するであろうグルーヴィーで普遍的なふたつのトラックだ。そう、昨年のソロEPがそうであったように。
  • Tracklist
      A1 Thirstin' B1 Atmosphère
RA