Errorsmith & Mark Fell - Protogravity EP

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  • スタジオを引退していたErrorsmithが再び戻って来たのはMark FellとPANの功績だ。いや、完全に引退ではなく半引退だ。この5年間、Erik Wiegand(Errorsmith)は2人組ユニットMMMのメンバーとして数枚のシングルを発表し、97年のヒット"Donna"のレイヴスピリットを継続している。MMMの作品では、Wiegandのピークタイムの衝動が思う存分発揮されている。長らく休止状態のソロプロジェクトで見事に提示されていたような、とげとげしいコンピューターミュージックの一面は、MMMではそれほど分かりやすく表れていない。その衝動が今回のコラボレーションで復活している。しかし、これまでとは異なる形で表れているようだ。 ふたりのプロデューサーの間にある領域という意味では、「Protogravity」はFell寄りに位置しており、Wiegandのワイルドで過激なアレンジよりも、Fellによる密教的ビートアレンジを聞くことができる。そのトーンは色彩豊かだが多義的であり、その構造はゆっくりと変化している。長尺のAサイド"Protogravity"は、左右非対称のグルーヴを掴んで離さない。その結果が瞑想的なのか不快なまでに緊張しているのかは判断しづらい。途中、ファルセットボイスがミックスに埋もれるようにしてハーモニーを紡いでおり、ロボット的な空間に奇妙な人間味が与えられている。こうした声(おそらくWiegandによるものだろう)は"Cuica Digitales"でも用いられている。リズム面でよりストレートになっており、声は気持ち悪いくらいピッチから外れていくように加工されている。それにより意識を掻き乱す効果が生まれているが、奇妙なことに愉快さが保たれている。そして、金属の振動音が一斉に放たれる"Atomic #80"は圧巻だ。ふたりが手掛けてきた他作品と比べると「Protogravity」は薄らとした印象だが、決してその魅力が少なくなってはいない。
  • Tracklist
      A1 Protogravity B1 Cuica Digitales B2 Atomic #80
RA