Nicolas Jaar - Nymphs II

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  • 「Nymphs II」は2曲入りのシングルに過ぎないが、とても重みがある1枚だ。本作はNicolas Jaarにとって2011年のアルバム『Space Is Only Noise』(英語サイト)以来となるソロリリースだ。このアルバムによって彼はクロスオーバーなスターダムへと躍進することになった。一方で、彼は映画音楽を担当し、レコードレーベルを始動させ成功に導き、そして、バンドDARKSIDEで世界を席巻してきた(現在は解散している)。こうしたプロジェクトを特徴付けてきたのは、非常に落ち着いたムードの中に力強い感覚を見出すことのできるJarr独自の能力と、長尺のトラックが多い点である。「Nymphs II」ではそのどちらの面もよりハッキリと表れており、彼がこれまでに携わって来た中でも、今回の2曲は特に強力だ。 本作はあらゆる面で儚さを感じる。声や楽器が原型を留めなくなるまで伸縮/屈曲し、他のパートはインパクトの瞬間に歪んだり、完全に消え去ったりしている。"The Three Sides Of Audrey & Why She's All Alone Now"では、激しくぶつかり合うドラムサウンドが繊細なサウンドの膜を壊していき、その嵐のような展開をJaarの声が再び静寂に落ち着けている。"No One Is Looking At U"では、Jaarの声は背後から常に聞こえてくる。彼がシャワーを浴びながら何気なく口ずさんでいるようなシンプルなメロディだが、そこへすべての要素が結び付けられている。仰々しくも温もりを感じさせる"No One Is Looking At U"は、おぼろげながら"A Time For Us"(数年前にJaarが発表した躊躇いがちなダンスフロアアンセム)に似ている。分かりやすいトラックである訳ではないが、勢いのあるベースラインや膨らむオルガン、そして、ボーカルが一緒になる瞬間はとても鮮烈だ。その後、すべての要素は漂うアウトロへゆっくりと拡散していく。Jaarが最高の仕事をする時と同様、「Nymphs II」にも、魅力的かつ不可思議で背筋がゾクゾクする瞬間が詰まっている。
  • Tracklist
      A1 The Three Sides Of Audrey & Why She's All Alone Now B1 No One Is Looking At U
RA