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Sónar 2015
Published
Jul 3, 2015
Words
Jordan Rothlein
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今自分がSónarにいるという事実を強く実感したのは、木曜日の夕方、Sónar By DayでAutechreのセットを聴いている時だった。外ではバルセロナの太陽が燦々と輝いている一方で、SonarHallの大きな空間は全ての照明が落とされ、そこには暗黒が広がっていた。ステージ前のベストポジションを確保する為に観客の間を通り抜けていったのだが、そんなことをしても意味がないと筆者はふと気付いた。Autechreの“ヴィジュアルショウ”には、ベストポジションなどないのだ。音が鳴り始めた直後、ステージ前方の上部にある投光照明がPAスピーカーの後ろで演奏するRob BrownとSean Boothを照らし出したが、ライトは観客の方を向いていた。そして、その後彼らがはじき出したビートは、フロアをより暗く感じさせた。ライトショウやビデオプロジェクションの伴わない音楽は、冷たくアブストラクト、突き刺すようでいて、見通しがきかないように感じた。場所を変えもう1つか2つのセットを聴きたかったが、少し危険な気がして止めておいたー自分が今フロアのどこにいるのか、ほとんど分からなかったからだ。結局なんとか出口まで辿り着いたのだが、そこでフロアがほぼ満員になっていることに気がついた。会場全体の半分近くの面積を占めるSonarHallで行われたこのショウはハードコアな体験となった。他にも音楽の選択肢はたくさんあり、外の天気はほぼ完ぺきだったにも関わらず、参加者たちは完全なる暗闇とエクストリームなサウンドに群がっていたのだ。 これこそがSónarの真髄であると私は思う。Sónarは、普段は注目されることのないような音楽がスポットライトを浴び、逆にメインストリーム寄りなブッキングが大胆な選択のように思われ、どんな変なことになろうとクラウドは挑戦心を捨てない、そんなフェスティバルなのだ。筆者は、今年のプログラミングにマキシマリストな流れを感じた。超満員のSonarComplexステージでは、Russell Haswellによる断続的なビートの嵐のようなノイズが鳴り響いた。SonarHallで行われたVesselによるポスト・パンク〜インダストリアル色の強いライブセットは、ダークでセクシャルなプロジェクションに彩られた。SonarDômeのFloating Pointsや、屋外のSonarVillageでのNick Hookなど、比較的ライトなはずのBy Dayさえも、結果として濃厚な内容となった。前者は満員のフロアで、筆者が過去の彼のプレイでは聴いたことがないほど痛烈なセットを披露し、後者はパーティー・ジャムの歴史を綴るようなプレイをしてみせた。
お祭り騒ぎはSónar By Nightへと続いた。金曜日に行われたDie Antwoordのライブショウの、めまぐるしいスピードで変化するプロジェクションや、カオスな演出のバックダンサー、そして甲高いヴォーカルは、屋内ヴェニューとしては最大規模のサイズであるSonarClubですら狭く感じさせた。その後筆者はSOPHIE目当てにSonarLabへと移動。派手なシンセシスとハイなソングライティングで知られるSOPHIEだが、この日はいつもより若干控えめな印象だった。一方、途方もなく巨大な会議場の真ん中にポツンとある小さなステージ、SonarCarにはRandomerが登場し、その強烈なサウンドシステムからは、彼の凶暴なテクノが、ゾッとするようなノイズの嵐となって鳴り響いていた。(筆者はその部屋の端にあった屋台で夜食にハンバーガーを買おうと思っていたのだが、あの悲鳴のような音を聴いたら食欲がなくなってしまった。) もちろん、Skrillexも忘れずにチェック。ステージ前方にはスモークマシーンが数台設置され、プロジェクションは彼の音楽と同じくらいド派手だった。筆者はこの時、SkrillexとSonarPubで行われていたJamie xxのショウとを行き来しており、Jamie xxは最新アルバムからの楽曲とヴァイブを展開しているようだった。計算していたわけではないと思うが、先ほどまで欲しくてたまらなかったゆったりとした空間がそこには広がっていた。
もし、今年のSónarがさらに大きな規模になっていたら、フェスの中にある比較的繊細な瞬間というのも特大なインパクトになっていたかもしれない。土曜日にSonarHallで行われたEvian Christのライブセットはミニマリストのかけらも感じなかったが、彼の完ぺきなドラムや、Emmanuel Biardによるプロジェクションのヒプノティックでクリーンなラインなど、全ての動きには意味があった。テンポ、インパクト、そして総体的なエナジーレベルで言えばSkrillexに匹敵するほどであったが、Skrillexは5分か10分も聴けばお腹いっぱいになった一方で、Evian Christを聴いていた時はフロアから離れることができなかった。金曜日のSonarComplexでは、Voices From The Lakeが1時間という枠の中で、ドリーミーなアンビエント・テクスチャーから滝のような激しいテクノまでを構築。それに刺激された大観衆は座席から立ち上がり、身悶えしながら踊り始めた。 土曜夜のSonarPubでは、MIDIコントローラーを打ち鳴らすバッグバンドを従えたFKA twigsが、筆者の中で今回のフェスティバルのベストパフォーマンスを披露してくれた。そのオーディオヴィジュアル・ショウの中で、彼女はまるで別世界のもののようなダンスをしながら、歌詞を完ぺきに歌い上げた。筆者は、このパフォーマンスと、他にお気に入りだった今年のプログラムとの間に、わずかばかりであるが繋がりがあることに気付いた。例えば、Sónar+Dのテック・ショウケースで行われたART+COM's RGB | CMI Kineticのインスタレーションは、 5つのミラーリングがケーブルシステムのようなもので空中に吊るされ、行き交うビームライトと共に
Walter Ruttmann
スタイルの光の像を床に映し出していた。Ólafur Arnaldsが音楽を担当していたそのインスタレーションは、壮観でありながらもくつろげる空間を演出していた。もしフェスティバルで他に見たいプログラムがなかったら、筆者はおそらく一日中観客席に腰掛け、その5つのリングがありえないダンスをしているのをずっと眺めていたかもしれない。
マキシマリズムはSónarにとって悪いものではない。大型フェスティバルを開催するにあたる彼らの熱心なアプローチにはピッタリだ。ただ、By Nightでは、物理的な問題が露呈してしまった。“認められた”参加者は激しく混み合うフロアから2つのVIPバーのうちの1つに逃げこめたものの、その他のオールナイト・プログラムを楽しむ為に来た観客には、音楽から離れたチルアウトゾーンらしきものが準備されていなかった。これは少し不公平に感じた。しかも、By Nightの会場であるFira Gran Via L'Hospitaletは超巨大なヴェニューであり、そこから1つくらいスペースを取るくらい事足りないだろうに。2015年のSónarほど強力なラインナップであれば、フロアの外で多くの時間をすごしたいと思う人もそんなにいないかもしれないが、ヨーロッパ最大クラスのエレクトロニック・ミュージック・マラソンも、そんなチルアウトスペースがあればもっと参加しやすくなるのではないだろうか。
Photo credits: Sónar Festival
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