- Wolfgang Voigt作品の中心になっているのは規則的な4つ打ちのキックドラムかもしれない。しかし、彼はテクノ界で最も規則的ではないプロデューサーだ。彼の作品は鏡の間でテクノ、ポルカ、ビッグバンド・スウィングといった全ての要素と戯れているかのようであり、その多くはラップトップを基調としたアバンギャルド・ジャズとでも言えるほど捻りがあり様々に屈折している。『Protest: Versammlung 1』の"Kafkatra 2.3 (Jazz Mix)"を聴けば、この点との繋がりが明らかになる。
表向きにはProfanのサブレーベルProtestはVoigtがふわりとしたダンスフロアものを発表するプラットフォームだが、"Robert Schmann"、"Rosenkranz"、"Empathie"のような最もダイレクトなトラックでさえ、Voigtのサイケデリックな衝動は色濃く表れている。こうしたトラックではパンチの効いた歯切れのいいドラムとスムーズなベースラインがKompaktのハウススタイルでグルーヴを生み出しているが、繋ぎ止めている素材が緩んでくるところは変わっていない。Voigtは奇妙なサンプル(クラシック、シュラガー、シンセポップ、フィールドレコーディング)をトラックに重ね合わせたり、サウンドを巧みに操作したりして微妙にタイミングがずれているように、もしくは、複数のトラックを重ね合わせてプレイしているように聞こえるようループをアレンジしている。ピアノとハングチャイムで豪華に装飾した"Endlich"や"Umbau 2.3"では、この技巧によって本当にドラマティックな緊張感が生まれている。全てがバラバラに崩壊して、混沌に陥りそうになって動揺してしまうかもしれないが、決してVoigtはそのようなことは起こさせない。
ミニマルの最盛期では、こうした我の強いサウンドは当たり前だった。今回の収録トラックは(特に至高の反復トラック"Unendlich"は)一番良かった頃のVillalobosを彷彿とさせる。しかし、最近のDJにはこのようなトリッピーで挑戦的な音楽をプレイする度胸はないかもしれない。『Versammlung 1』が全ての物事に対する抗議(protest)であると言うならば、それはおそらく通説であり集団心理的な考えに過ぎない。実際は、ことテクノにおいては、Voigtが望んでいるのはリスナー各自が自分自身で考えることなのである。
Tracklist01. Robert Schumann / Clara Wieck
02. Martin Luther
03. Endlich
04. Empathie
05. Erst Schiessen (Dann Fragen)
06. Dä Hellije Zinter Mätes
07. Kafkatrax 2.3 (Jazz Mix)
08. Umbau 2.3
09. Rosenkranz (Studio 1 Mix)
10. Tubass 1.2
11. Freiland - Grün (Tubass Mix)
12. Unendlich