Various - Veil/Unveil 003

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  • 多くのドラム&ベースは未来に対してどことなくSF的なアイデアを抱いている。そこでは統制された機械音、鋼鉄の輝き、ディストピアな殺伐とした世界が我々を待ち構えている。しかし、そうしたトラックを実際に聴いてみると、頑なで近寄りがたいことが多い。一方、ASC率いるAuxiliaryのアーティスト勢は短命に終わったAutonomicムーブメントにおけるメロディアスな感性を活用し、リアルな感覚を持ってドラム&ベースを実践する数少ない存在だ。「Veil/Unveil 003」ではこの点がかつてなくハッキリと表れており、普段とは異なる軍隊のようなリズムを優雅なサウンドデザインとメロディで抑制している。収録曲のサウンドは2013年にリリースされた前作から変わっていないかもしれないが、本作のように強力なトラックであれば文句をつけるのは難しいだろう。 近年、ASCの楽曲は徐々にアンビエントテクノに近付いていたが、今回の"Lose Control"は小細工なしのドラム&ベースだ。この数年で彼がリリースした中でもかなりヘビーなトラックになっている。ヒップホップのスクラッチ音、ラップのサンプル、レーザーから発射されているかのように小節を駆けるシンセといった素材を用いていながら、トラックにはなお遊び心がある。一方、Sam KDCの"The Messenger"は軽率さは一切無く、まるで過酷な試練を与えているかのようだ。 Auxiliaryの秘密兵器、Method Oneは"Pyre"にて典型的とも言えるエモーショナルなアレンジを公式に則って実践している。しかし本作で本当にやってくれたのは、過小評価されているAuxiliaryアーティストのひとりSynth Senseだ。クリック音、小刻みな振動音、タイムストレッチをかけたサウンドエフェクトを広大に配置した"Red Skies"は、ドラム&ベースの堅固な構造に落とし込んだクレイジーなIDMのようなトラックだ。本作にはまさにAuxiliaryが得意とするサウンドが詰め込まれている。
  • Tracklist
      A1 ASC - Lose Control A2 Synth Sense - Red Skies B1 Sam KDC - The Messenger B2 Method One - Pyre
RA