Dauwd - Jupiter George

  • Share
  • ウェールズのDJ/プロデューサーDauwdの制作ペースは遅いかもしれないが、だからといって、彼に強い意志が無いとは言い切れない。2011年にPictures Musicからレビューして以来、Dauwd Al Hilaliはリリースごとに低域を大量に含んだハウス/テクノを、典型的でありながら非常に際立ったスタイルで見事に精練してきた。彼のレコードは陰気になることなくディープで、クールさを失うことなくファンキー、そして、響きを抑えた音使いにも関わらず、非常に鮮烈で、「Jupiter George」もまさにこの全てに当てはまる。さらに本作はその次なるステップともなっている。一番分かりやすいのは、生録音による埃っぽいサンプルが新たに彼の音楽に加わっている点だ。こうしたビンテージ感のあるサウンドの断片によって("Jupiter Geroge"と"Ritter Sport"で、特に聞くことができる)、Dauwdの最新EPには、ハウスミュージックの伝統とも言える活き活きとした空気が漂っている。 しなやかなベースとギターによるグルーヴを中心に据えたタイトルトラック"Jupiter George"では、ドラムを土台としてミックス上に延々と響き渡るメロディを奏でるシンセと繊細な空間音が積み上げられている。Dauwdはそれほどディスコに興味を示したことはなかったが、このトラックではLindstrøm風のバレアリックサウンドにアプローチしている。仮に"Jupiter George"が大気圏からリスナーを連れ出す宇宙船だとするならば、"Ritter Sport"は月面でリスナーを待ち受ける低重力空間だ。ファンクをベースに構築された音数控えめの有機的なマイクロハウスとなっており、レトロな響きを駆使して、強力なローエンドとパンチの効いた高解像度サウンドに対してノスタルジックな感覚で上手くバランスを取っている。レコードを締めくくるのはテックハウス的な滑らかなバウンスを感じさせる"Take Four"だ。このトラックは他2曲と対角線上に位置しており、Dauwdが自身の技巧をさらに前へと押し広げようとするアーティストであることを実に手際よく思い出させてくれる。
  • Tracklist
      A1 Jupiter George B1 Ritter Sport B2 Take Four
RA