Skrillex and Four Tet in London

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  • 3月29日日曜日、SkrillexはマイアミのUltra Music Festivalでメインステージのクロージングを務め、DiploとJack Üが参加した彼のパフォーマンスは大きな盛り上がりを見せた。そして、WWEの興行並みに芝居がかった雰囲気の中、なんとPuff Daddy(彼とDiploは、クラウドを盛り上げる為に不安定なDJテーブルに登っていた)、更にはJustin Bieberまでもがサプライズで登場し(BieberはJack Üの新曲"Where Are Ü Now"でヴォーカルを務めている)、客席にいた10代の女の子が顔をしかめてしまうようなダンスをしてみせた。そしてステージは、レーザーやビデオスクリーン、プロジェクションによって過剰なほど彩られていた。約6万人もの観客が、超大掛かりなショウを目撃したようだ。 その1週間後、天井から汗の雫がこぼれ落ちる中、Skrillexはニヤリと笑ったFour Tetにヘッドフォンを渡した。彼らは、ノースロンドンのパブの地下にある、キャパ500人程の薄汚れたイベントスペースUnderworldでB2Bをプレイしていた(ここ普段、ロックやメタルのショウが行われているようなヴェニューだ)。イベントの情報は開催の1週間前に発表され、RAやソーシャルメディア上はたくさんの“は?”で埋め尽くされた。ユーザーネームMar1oは、RAのイベントページに「一瞬Wunderground(ダンスミュージックのパロディネタを扱うウェブサイト)を見てるのかと思った」とコメントしている。要するに皆、独自のテイストやプロダクションで支持を得るFour Tet、そしてEDMシーンにおけるビッグネームの1人であり、ダブステップからブロステップを生み出しメインストリームへと広げた張本人であるSkrillexが何故共演することになったのか、不思議でたまらなかったのだ。Kieran Hebden(Four Tet)もSonny Moore(Skrillex)も、実現に至った理由は公では語らなかったものの、2人のセットが始まって20分もすると、筆者の頭には「どうして彼らは今まで一緒にやらなかったんだろう?」 という疑問が浮かび上がった。 イベント中、Mooreはクラウドに、彼らが直接会ったのはその日が初めてであることを明かし(彼はことあるごとにマイクを握っていた)、筆者はその後、彼らがサウンドチェックの時間を取りレコードを何枚かプレイしたことを個人的に聞いた。彼らの共演はもとより、共にサウンドチェックまでしたとは想像し難いだろう。彼らは1曲ずつで交代すると決めていたのだが、結果としてお互いのスタイルがワイルドにぶつかり合い、素晴らしい即興ミキシングを聴くことができた。わずかにフィルターをかけながら次の曲につないでいくのに、2、3分もかかっていなかったようだ。Mooreはしばしば、ミキサーをいじろうとHebdenの体の向こう側に手を伸ばしていた。そしてステージの端では、Ben UFO、Pearson Sound、Pangaea、Floating Points、Caribouといったアーティスト達が皆、「こんなにうまくいってるなんて信じられない」とでも言うような表情を浮かべていた。 音楽的な話をすると、彼らのセットはフロアバンガー満載であった。もちろん、Hebdenはいつもよりアゲめの選曲が必要だっただろうし、Mooreは少しテンションを下げる必要があっただろうが、彼らはお互い不利にならないような最高のポイントを見つけることに成功したようだ。実際現場で聴いていても、今どちらがプレイしているのかハッキリとわからないほどだったのだ。Hebdenはジャングル、ガラージ、グライムを中心に、一方Mooreはトラップ、エレクトロハウス、ダブステップなどをかけていた。特に記憶に残ってるのは、HebdenがエモーショナルなEDMナンバーと、グライムクラシックの"Pulse X"を大胆にミックスした瞬間だ。少し後にMooreも似たようなトリックで、Joy Oの"Ellipsis"に自身のド派手な曲をかぶせてみせた。また、Jack Üの"Take Ü There"をリワインドする瞬間もあり。筆者はもともとこの曲が好きだったが、この日聴いてからもっと好きになった。Hebdenがイベント翌日、Mooreに向けて「“僕はライオンキングをかける。大丈夫、心配しないで”」とツイートしている通り、Mooreバージョンの"Circle Of Life"は、この夜で1番忘れられない瞬間の1つとなった。午前2時頃、HebdenはThe Doorsの曲をかけ若干滑り気味だったのだが、彼がその時いかに大胆になってたのかが分かった。 MooreとHebdenを前に、クラウドはその夜ほとんどの時間、まるでコントロールされているかのような興奮状態にあった。イースターの長い週末の最後の夜に行われたパーティーは、フェスティバル最終日のようなグチャグチャの雰囲気だった。室内は酷く暑く、ギグエリアの後方に立っていた筆者は、少し斜めになっている床が汗でベトベトになっているせいで、2人の観客が足を滑らせているのを目撃した。セット終盤、顔にタトゥーの入った冷静なセキュリティスタッフは、クラウドサーフィングをする男性に声をかけ止めさせた。Mooreの音楽は万人受けするものではないが、人々を熱狂させる様子に筆者は開いた口が塞がらず、彼のショーマンシップには実に驚かされた。彼は、Hebdenの最後のトラック、Wu-Tangの"C.R.E.A.M."からTotoの"Africa"へと繋いだ後、観客がキャンドルを灯すように携帯電話でウェーブを作れるよう、室内の照明を全て落とした。イベント終了後、出口である女の子が友人に向かって「O.M.G.」と口走った。「超ヤバかったね。」我々が普段考えるアンダーグラウンドとメインストリームの境界、そしてインテリとミーハーの違いなど、この日ばかりは何もないように感じられた。
RA