Various - Technique 20th Anniversary

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  • 自分が知る限りでも、渋谷の街では、レコード文化衰退のあおりを受け、数年前に多くのレコードショップがクローズしている(ヴァイナル文化の再興が話題となる少し前のことだ)。その中でもTechniqueは常に新たな一手を意識しつつ、テクノ/ハウスを中心とした良質なヴァイナルを取り揃え、激動の20年(厳密には94年開店なので21年)を乗り越えてきた。その信頼度は海を越え、来日したアーティストの東京巡りの定番となっている。2014年は、Techniqueを運営するEnergy Flashにとって変化の時期だったと言えるのではないだろうか。そう感じる理由の一つとして、Energy Flash Distributionの躍進がある。ご存知Cabaret Recordingsの成功や、都内から各地方都市のトラックメイカーまで様々なニューカマーを世に送り出す活発さは、日本の新たな世代にとって強い後押しとなっている。 一方、この度リリースされた20周年盤のトラックリストは、フレッシュな顔ぶれというよりは、歴史の統括を任せられるだけの力量を持ったベテランで占められている。いずれのアーティストも自らを象徴するグルーヴやサウンドを惜しみなく打ち出しており、DJにとってあらゆる時間に対応できる強力な武器でもあり、リスナーにとっても飽きることなく楽しめる良質な楽曲集となっている。 一曲目はRhadooとCezar LazarによるユニットChillaz “Thonran”。[a:rpia:r] 、Understand双方のオーナーによる緻密なグルーヴは、ルーマニアン・テクノの最高峰と言って過言ではないだろう。Audio Werner “See”は先日発表されたJichael Macksonとの共作にも通じる深いサウンドスケープの中に、彼独特のシャッフル感がしっかりと刻まれた秀逸なトラックだ。Fumiya Tanaka “Die Of Joke”はハットのパターンからして一筋縄ではいかないリズムと、キープされる低域のギャップが奇妙なハーモニーを創り出す。日本語のセリフのようなサンプルも強烈だ。シーンへの復帰以降、目覚ましい活躍を見せるSteve O'Sullivanによる“Ounce to the Bounce”は、緩やかなテンポのツール的なテクノだが、現代の質感でMosaicクオリティを実現したようなトラックだ。 Point Gの”Michel”は容易にフロアの熱気を創造できる楽曲で、フレンチハウスの高揚感を最低限の素材で実現したようだ。彼もSteveと同じく、90~00年代とは違った形でかつての勢いを取り戻している。Cabaret Recordingsを通じTechniqueとも縁深いSo Inagawaは、店舗の所在地宇田川の名を冠したトラック”Udagawa Vibes”を提供。薄いノイズが波のように心地よく、メロディ的な要素を抑えながらも彼独自のスムースさが発現されている。Gonno “To The End Slowly”はこの盤の中でもとりわけ自らの色を感じられる。ボトムの太さが安定感をもたらしつつも、クライマックスに向けて上り詰めるような展開はまさに彼の真骨頂とも言えるサウンドだ。 ジャケットはもちろん、内側のスリーブとセンタースリーブのアートワークの連動など、所有するモノとしての魅力が存分に引き出された仕様にも、ヴァイナルを知り、誰よりもその価値を知るレコードショップとしての矜持を感じる。今作のデザインはCabaret RecordingsやAOKI Takamasa、Radiqの作品を手掛けたMAAによるものである。いずれの曲も、きらびやかなフレーズのようなわかりやすい特徴があるわけではないが、聴くごとに各アーティストの持ち味が浮かび上がってくるような深みがある。テクノ/ミニマル・ディープハウスの現在におけるひとつの到達点が刻み込まれた、シーンと共に地道に歩み続けてきたTechniqueらしい逸品だ。
  • Tracklist
      A1 Chillaz (Rhadoo and Cezar Lazar) - Thonran B1 Audio Werner - See C1 Fumiya Tanaka - Die Of Joke D1 Steve O'Sullivan - Ounce to the Bounce D2 Point G - Michel E1 So Inagawa - Udagawa Vibes F1 Gonno - To The End Slowly
RA