Goat – Rhythm & Sound

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  • Goatは、ギター、ベース、サックス、ドラムという構成の4人組バンドで、それ以外の楽器を使用することなく、従来とは異なる響きを持つサウンドを生み出している。バンドの中心人物であるKoshiro Hinoが並行して展開しているBonanzasと比較するならば、Goatはラウドネスではなくテクスチャーの部分から音そのものにフォーカスしている印象だ。ギターとベースではミュートを多用し、サックスに至ってはベルの部分にペットボトルを入れるというプリパレーションを施しているため、そのサウンドは弦の鳴りや管の共鳴というよりも、打楽器の振動に近いものとなる。その結果、この3種の楽器はどれも音高が不明瞭になり複雑に揺らぐ響きとなるわけだが、この点はShackletonが好んで制作に取り入れているTonal Rhythm(音程のあるリズム)と同じベクトル上にあり、彼がGoatの音楽を気に入っているという話も非常に合点がいく。そして、Goatが機材を使うのではなく、人力による演奏にこだわっているのも、こうした規則的ではない絶妙な音高差と揺らぎを生み出すために大事な要素だと言えるだろう。HEADZ / UNKNOWNMIXから発表となるセカンドアルバム『Rhythm & Sound』もこの手法を活用し、2013年の『New Games』におけるミニマルな陶酔感をさらに突き詰めており、一つ一つのサウンドが生々しく鼓膜を掻きむしるスリリングな音世界を構築している。 本作に収録された全5曲いずれにおいても、打楽器的な音高差を伴う楽器を操る4人によって、鋭く張り詰めた空気を携えた強靭なうねりが生み出されている。エフェクトの使用が最小限に控えられているため、未加工の音そのものによる強度が際立っている点も特筆したい。”Rhythm & Sound”と”Solid Eye”は、ギターのハーモニクスとミュートの奏法を使い分けることで豊かなバリエーションを実現しており、互いを聴き比べると面白い。パーカッションとドラムによるポリリズムパターンが変化していく変拍子リズムトラック”FP”は、非常にシンプルな作りになっている分、各サウンドとルームリバーブのバランスの良さが際立っている。執拗にピッキングされるギターのミュート音とベースのコンビネーションがクセになる”Ghosts Part 1”では、時折、擦りつけるようなノイズが挿入されるのだが、このサウンドはおそらくサックスを加工したものだろう。”On Fire”は、それまでがらんと広がっていた巨大な空間に、深くエフェクトをかけたサックスが吹き込まれる展開となっており、本作では異色の仕上がりだ。むしろ前作『New Game』の”std”に近い。 全曲通じて、シンプルな編成かつ多くの制約下で楽曲が制作されているが故に、1つでも構成要素に変化が起こると最大限のインパクトが実現されていることが分かる。Koshiro Hinoは、踊らせることを前提としてGoatの楽曲制作を行っていないと語っている。しかし、身体に直接訴えるインパクトが4人の演奏によって繰り出されている瞬間を目前にして、じっとしている方が難しいのではないだろうか。是非ともライブで体験したい音楽の1つだ。
  • Tracklist
      1. Rhythm & Sound 2. Solid Eye 3. FP 4. Ghosts Part 1 5. On Fire
RA