Kassem Mosse / Simone White - Three Version

  • Share
  • Simone WhiteとKassem Mosseの名前が同じレコードに並ぶなんて(しかも、ロンドンのHonest Jon'sから)なかなか無いことだ。アメリカのシンガーソングライターであるWhiteは、同レーベルから、くすんだボーカルによるポップアルバム数枚をリリースしている。Kassem MosseことGunnar Wendelはと言うと、Workshopや他のレーベルから発表してきたモノトーンな作品により、カルト的な人気を獲得したテクノアーティストだ。さて、「Three Version」だが、本作には、Whiteの2012年のアルバム『Silver Silver』から選ばれた3曲をWendelが絶妙にリミックスしたトラックが収録されている。 従来のKassem Mosseの雰囲気が感じられるのは、本作では"Flowers In May"のみだ。具体的に言えば、彼の特徴の1つであるBPM110で展開するトラックが、Whiteのとろけるような和音と白昼夢のようなボーカルに対して、見事にバランスを取っている(昨年、RAポッドキャストに提供されたLowtecの傑作ミックスの序盤にも使われていたトラックだ)。原曲の素材をほぼ全て用いているが、密室的なサウンドと、つんのめるようなリズムは、手を加えずとも、Wendelのスタイルと相性抜群だ。 他2曲のリミックスは軽めのタッチとなっている。"In The Water Where The City Ends"の序盤は、音数少なく素材を散りばめた奇妙なバラードなのだが、ギターサウンドが取り除かれると、散り散りになったパーカッションを中心に展開していく。"Long Moon"は、原曲からかなり変わっており、ボーカルを無くし、ぎこちないバックビートと分厚いベースギターを加えている。しかし、そのサウンドは、Whiteの感性と同系統の響きを持っており、リミックスというよりも、原曲の別テイクとでも言えるような印象だ。今回の3曲からは、これまで以上に、細かい仕事をこなしているWendelの一面を伺うことができる。
  • Tracklist
      A1 Flowers In May B1 In The Water Where The City Ends B2 Long Moon
RA