Den - D and V

  • Share
  • Tokuto DendaことDenが2014年に始動させたレーベル・NETAは、正にDJによるDJの為のミニマルなネタを世に送り出している。2000年代にロンドンやベルリンへと渡り7年ものDJ経験を積みつつ、同時にop.discなど複数のレーベルから作品をリリースしていたDenが、フロアと言う現場での音を意識している事は間違いない。その一方でレーベル名がNETAだけに第1弾のラベル面には鯵と記載されていたが、同様に本作には鮭と記載があり、そんなアートワークからユーモアも感じ取れるのではないだろうか。 確かにフロアに即す事を重視した機能性は"D and V"からして顕著で、メロディーに頼る事なく硬質でメタリックなリズムやパーカッション、そしてシンセの上モノもリズムと一体化してどこまでも平坦な展開ながらも、無駄を削ぎ落としながらミニマル性を極めている。そこに加わる呻き声のような不気味な効果音からはユーモアが感じられるが、雰囲気は高揚も消沈もなくひらすら淡々とグルーヴを継続させる事に終始する。"Gottasay"はやや肩の力が抜けたハウス寄りの端正なリズムを刻むが、ここでも魂が抜けたような淡々としたボイス・サンプルやヒプノティックな上モノが反復し、その最小限のパターン性を高めている。裏面へと続くと鈍い電子音が蠢く中から呟きのようなボイス・サンプルが割り込んでくるミニマル・ハウスの"Midnight, Wired"が収録されているが、もう1曲の"Mad Pierrot's Misery"はこの盤の中では少々異色な出来だ。ポクポクとしたパーカションや鈍いベース音が密に刻まれる反復性の高い構成ではあるが、いつしか浮かび上がる奇妙な電子音は定形を保つ事なく変容し催眠的な効果をもたらすのだ。しかしどの曲も基本的にはDJがミックスしやすく、またミックスされる事でこそ映えるような限りなく展開が抑制された構成をしており、Denによる端正なミニマルの美学が反映されている。
  • Tracklist
      A1 D and V A2 Gottasay B1 Midnight, Wired B2 Mad Pierrot's Misery
RA