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Pioneer - HDJ-C70
Published
Mar 4, 2015
Words
Daisuke Ito
Released
October 2014
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プロの愛用者も多く、幅広いラインナップを展開するPioneerのDJヘッドフォンにおいて、
HDJ-C70
は異彩を放つモデルと言っていいだろう。派手なルックスや高級感のあるメタル・デザインとは一線を置き、マット・ブラックで統一された本機は、メーカーのロゴマークすらヘッドバンド部に小さく刻印されるだけのシンプル極まりないデザイン。それがDJ用ツールとしての存在価値を高めており、一見するルックス以上に機能性を重視したモデルであることが伝わってくる。細部に目を向けると、コンパクトな回転式ハウジング、ヘッドバンド上部に這わせられたケーブル、イヤーパッドを調節するスライダーのデザインからも、DJの間で名機として知られる
Sennheiser HD25
をある程度踏襲したモデルであることが分かる。正直、Pioneerのような大手メーカーがこういったモデルをリリースしたのには驚いたが、リリースからすでに25年以上が経過したSennheiser HD25が今でもDJに愛用され続けるのは、その扱いやすいデザインやサウンドが、DJヘッドフォンとしてひとつの完成型であるからに他ならない。それを踏襲してさらに機能をリファインさせたモデルがリリースされたとなれば、DJユーザーにとっては嬉しい限りである。
本機の内部には大型希土類マグネットを使用した新開発のΦ40mm大口径ドライバー・ユニットを搭載し、周波数特性は7Hz~32,000Hz。DJモニタリングに適したチューニングを施しており、ユニット内部のポールピースに銅キャップを装着することで歪みを低減している。出力音圧レベルは100dBで、最大入力時は120dBの大出力に対応するのは特筆すべきだろう。実際に本機を大音量で鳴らしてみると、その圧倒的な音量感に驚くはずだ。ミキサーのモニターレベルを上げてテストしてみると、ドライバーが心地良く駆動しはじめ、ほぼマックスになるまで低音が歪まなかったのが印象に残った。イヤーパッドの素材はフィット感に優れたレザータイプ。側圧は強めでしっかりと密閉感があるが、これは外部からの音の流入を低減させるためにハウジング部に設けたチャンバー(空気室)の効果もあるようだ。またスライダーアームを採用するため、イヤパッドは前後90°まで無段階で回転できる。これによって頭にかけた状態での片耳モニターはもちろん、首にかけながらもモニターしたいときだけ即座にハウジングを耳に当てられる。また、ハウジングの外周に凹凸の付いたラバーリングを採用し、首にかけてモニターするときにハウジングがズレにくくなっていたり、ケーブルの絡みを防止するリブ加工のコードなど細部まで気の利いた設計も嬉しい。さらにヘッドバンド、イヤーパッド、ハウジング、コードなど各パーツは交換が可能。ロング・ユースを前提に作られているあたりからも、PioneerがHDJ-C70にかける本気具合が伝わってくる。
本機をテストしての感想だが、レコードを用いても、TraktorなどのデジタルDJセットでモニタリングした場合でも、まず印象に残ったのは音量の大きさである。筆者が普段使用している別社のDJ用ヘッドフォンと比較し、Technicsのアナログ・ミキサー、Native Instruments Audio Kontrol 1のモニターアウトでテストしてみても、かなりの音量差を感じ取れた。先述したが大音量でユニットをドライブさせたときの歪みの無さも特筆すべきで、クラブなどの環境でも気持ち良くモニターできるだろう。音質に関してはリスニングくらいの音量だと高域のレンジ感に物足りなさを感じるが、これはDJ用にチューニングされているからであろう。音量を上げるとバランスも良くなり、モニタリングもしやすい。ダンス・ミュージックのトラックをミックスするときは、BPMのシンク具合や曲の雰囲気が次にプレイする曲とマッチしているかを瞬時に判断する必要があるが、HDJ-C70は特に低音~中音域の情報量に優れているため、音の構成を瞬時に掴みやすい。特に大音量時の低域の解像度は素晴らしく、テクノやハウス系の音楽をモニタリングするとキックのディケイやアタックの質感がしっかりと見える。Sennheiser HD25のサウンドを中低域の押しの強さとすれば、HDJ-C70はそれに加えて音の情報量や低域のクリアさを兼ね備えている。耳への側圧は強めだが、掛け心地はすこぶる良い。試しにライブ映像の収録現場で音声モニターとして本機を使用したが、数時間装着しても耳が痛くならず、何よりも195gという軽量さは掛けていることを忘れるほどに快適だった。また、遮音性にも優れるのでDJ用としてももちろん、本機の音の特性を理解しておけば、収録や録音のモニター用としても使えるだろう。
駆け足で解説してきたが、HDJ-C70はDJ用ヘッドフォンの新たな定番モデルとしてのポテンシャルを充分に感じられた。今後クラブのDJブースで本機を見かける機会が増えるのは間違いないだろう。HD25よりも価格を抑えている点も評価できるうえ、DJ用としては申し分ない音質だ。ただ、一般的なリスニング向けとしては、高域の解像度に不足を感じたのも事実で、特にハイレゾなどの高域にかけてのレンジ感が求められる音源には適さなかった。とは言え、高域を充実させると大音量時に耳が痛くなってしまうので、そういう意味でも本機はDJ専用機として捉えるべきだろう。また、ダンスミュージックを制作するトラック・メイカーは、ミキシングのチェック用に本機を一台もっておくと良いと思う。オールマイティーではないが、DJ専用機としては高いポテンシャルを持った一台だ。
Ratings:
Cost: 4.3 Versatility: 3.7 Sound: 3.6 Build: 4.5
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