Herbert - Part 8

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  • 1995年に始まった「Parts」シリーズをMatthew Herbertが再開させたことは2014年におけるハイライトの1つだ。「Part 8」は2014年3枚目のEPにして、このシリーズ最後の1枚となる作品だ(少なくとも、現時点ではの話だが)。Herbertの新作アルバムが2015年の前半にリリースされる予定だが、今回のEPを聞くとますますアルバムが楽しみになってくるだけでなく、彼が突然ハウスにフォーカスしたプロジェクトを再始動してくれたことをありがたく思う。 「Part 8」を聞いてまず最初に思うのは、2曲目の"Remember Ken"の異質ぶりだ。ゲスト・ボーカルAde Omotayoによるメランコリーな声がシンプルなピアノと躍動するリズムに乗って届けられる。OmotayoはKindnessの新作にも登場している他、Amy Winehouseのバック・シンガーを勤めていた存在だ。個人的にこのトラックは2014年にリリースされた「Parts」シリーズの中でベストというわけではないが、エレガントに仕上がったスタイル的に変わり種のトラックであることには違いない。 つんのめるようなギザギザとしたシンセ・ポップ"The Wrong Place"や、水中でカチカチと音を立てるテクノ・トラック"Ticket"など、他のトラックの方が馴染みのあるサウンドだ。最後を締めくくる"Her Face"は不安定ではあるが可愛らしい音程の上を、鼓動するリズムを軸に軽やかなメロディが流れ込んでくる。気楽な特性を取り入れた音楽を目指したプロジェクトが到達したのが本作なのだと言えるだろう。
RA