Gage feat Kevin Jz Prodigy - Bad Bitch

  • Share
  • グライムの再来についてこれまで頻繁に議論されてきたが、多くの若手アーティストにとっては、そんな議論は全体の一部にしか過ぎない。プロデューサー達はイギリス国内に限らず国境を越えた場所でもグローバルな音楽要素を利用して、クラブ仕様のハイブリッドとしての特徴を持つサウンドを生み出している。つまり、銃撃音、ベースの振動、そしてバルチモアとジャージーのクラブにおける躍動するシンコペーション、ボールルーム・シーンでは当たり前のように用いられている「Ha」というボイス・サンプルなどが同時に使われ得るということだ。このボールルーム・シーンの音楽は多くのジャンルよりも浸透性に優れていると思えるのだが、本作のような形でコラボレーションを試みたものはこれまでには無かった。 イギリス人プロデューサーであるGageは2014年前半にデビュー・シングルをCrazylegsから発表しているが、今回「Bad Bitch」を携えての帰還となった。以前のトラック"Telo"は彼を現行のイギリス・シーンでもアグレッシブでリズミカルな冒険を試みるプロデューサーとして認識させることになったが、"Shiftin"に代表されるように、新たなリズムを追い求めようとする彼の姿勢が逆にグルーヴをバラバラにしてしまったこともあった。同様の問題が今回の最新作にも当てはまると言える「かもしれない」。このトラックは激しく打ち付けるダウンビートからグライム特有の鞭打つような勢いまでを含んだ強烈なサウンドの中をグラグラと展開している。「かもしれない」といったのは、フィラデルフィアのKevin Jz Prodigyが参加していなければの話だ。ボールルームのコメンテイター/プロデューサーとして尊敬を集めているProdigyは、ウィットに富んだボールルームらしい言葉使いや音節を活用したマシンガン・ボイスをロウな感覚で届けながら、Gageの挑戦に対して難なく立ち向かっている。2人は互いを駆り立て合っており、かつてなく上昇していくリズミカルな展開によってリスナーを最後までしっかりと押さえつけることだろう。Prodigyが最後に放つ「Oh!」という驚いた声に胸を揺らされるが、この声はGageとProdigyという珍しい組み合わせから生まれたタイナマイト級のトラックに対する驚きと言えるかもしれない。
  • Tracklist
      01. Bad Bitch
RA