Theo Parrish - American Intelligence

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  • Theo Parrishは2014年に新たにライブ・ショウを始めた。彼がライブ・パフォーマンスに関わったのは今回が初めてではない。10年前にはRotating Assemblyと一緒にプレイすることもあったが、それはあくまで自身の楽曲をバンドがステージでパフォーマンスしているだけで、Parrishが演奏している訳ではなかった。しかし今回はプロデューサーTheo Parrishでも、DJ Theo Parrishでもなく、ミュージシャンTheo Parrishなのだ。そして全てをイチから創造していくというミュージシャンシップが『American Intelligence』のエンジンとなっている。このアルバムは2007年以来となるParrishのソロ・フルレンクスだ。Parrishのバックカタログと言えば卓越したサンプリングとしてお手本となっているが、最近の彼はアート・フォームとしてのサンプリングから距離を置いており、「年を取るにつれ、俺がサンプリングしたりエディットしていたものに敬意を払うようになったんだ」と今年Slices(英語サイト)に語っている。そのため『American Intelligence』では小粋なサンプリングを聞くことはなく、全てはParrishが演奏した音楽であり、ボーカルはParrish自身によるものか、ライブ・ショウにおける彼の重要なパートナーIdeeyahによるものだ。 『American Intelligence』はライブ・ショウと対を成す作品であるようだ。9曲入りの3枚組のヴァイナル、そして15曲入りの2枚組CDという2つのバージョンで提供されているが、CDバージョンの方は楽曲が多すぎる印象で、2枚目を聞いているとテンションが途切れてくる。『American Intelligence』で最も素晴らしい場面を演出しているのは、Parrishが今年ライブで演奏してきたトラックだ。まずは"Footwork"、ダンス・フロアに抗いようのない瞬間をもたらす2014年のベスト・シングルの1つだ。Ideeyahをボーカルに迎えた"Ah"はほとんどドラムを用いていないスウィートなトラックで、"Be InYo Self"にはいつものParrishらしいグルーヴと深みがある。ドラムが飛び交う"Drive"でTheoは「Where's your drive? Has it died? It keeps me alive / お前のやる気はどこにいった?消え失せてしまったのか?俺が生き続けるために必要なのに」と歌う。それはまるで彼の周りにいる人たち、つまり、怠けたDJ、挑戦をしないライブ・アクト、そしてParrish曰く(英語サイト)苦しんでいる音楽誌に向けた問いかけのように聞こえる。"Life Spice"のつんのめるループはRolling Stonesの曲"Miss You"をUgly Editしたかのようなサウンドだ。一方、"Welcome Back"は食料品を買いに出かけたらおまわりに邪魔されたという場面をイメージした3分間のトラックで、Parrishによって演奏され、攻撃的なドラムがトラックを支えている。 CDバージョンの2枚目の最初には複雑なリズムのトラック3曲が収められている。"Cypher Delight"、"There Here"、"Thug Irony"の3曲は延べ20分間に渡ってあちこちへと飛びまわっているが、正直に言うと、この20分は長過ぎるし、Parrishが発表してきた12インチの傑作と同じくらい『American Intelligence』を好きになるのは難しい。それは彼の12インチ作品が際立っていた理由はサンプリングによることが多かったからだ。Ugly Editsシリーズはもちろん、"Solitary Flight"ではBlade Runnerのオーケストラ・サンプルが使われていたし、随分前には"Lake Shore Drive"でMass Productionのサンプルが使われていた。しかし本作は同じことを繰り返すことには興味が無いアーティストTheo Parrishにとって新たなチャプターの幕開けなのだろう。
  • Tracklist
      A1 Footwork A2 Cypher Delight B1 Ah feat. Marcellus Pittman, Ideeyah & Duminie Deporres B2 Creepcake C1 Make No War C2 Drive D1 Fallen Funk E1 Be In Yo Self feat. Ideeyah & Duminie Deporres F1 Helmutlampshade
RA