OL - Scape Border

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  • ジャンル横断型の音楽から年季の入ったクラシックなハウスへと意識が向かっているプロデューサーは数多いが、その中にモスクワのOleg Buyanov(OL)がいる。しかしR&Sの傘下であるMeda Furyに提供された「Scape Border」では、彼は単にアイデアを拝借するのではなく、クラシック作品の根本となる要素を取り込んでいる。その結果、若手のヒップホップ・プロデューサーがハウスのレコードをチョップ・アップしているかのようなサウンドになっている。 そのため「Scape Border」あまりにも聞き慣れているサウンドになっていることがある。今回のような試みは時に成功することもあれば、単に表面をなぞっただけのクリシェに終わってしまうこともある。緊張感のあるシンセ・アレンジとゆったりとしたサウンドが対照的なドリーミーなハウスを象った"Podumay"は成功例に入るだろう。"Around"も同様で、粘つくディレイ・エフェクトを用いた幻覚的なトライバル・ハウスに仕上がっている。しかし"Lum Edit"はぐらぐらとぎこちなく、とっ散らかったベースラインはトラックを引っ張っていけていないし、"Rimms"は各リズム・パートが別々にプレイされているかのようで、バラバラ過ぎていて焦点が定まっていない。"Myxa"のシカゴ感が見せかけなのは明らかで、紋切り型のボーカル・サンプルを使っていなければ、パンチのあるトラックになっていただろうが、逆にBuyanovの未熟さを曝け出す結果となってしまった。今回、彼が気持ちよくサウンドを奏でている唯一のトラックは"Melt Down"だ。このトラックからはヒップホップにインスパイアされたという以前の彼の姿が感じられる。しかし、しっかりと制御出来ていない場面があるとはいえ、Buyanovは非常に面白くトラックをまとめる術を知っているようだ。
  • Tracklist
      01. Lum Edit 02. Around 03. Rimms 04. MYXA 05. Podumay 06. Meltdown 07. X Pleasure
RA