You're A Melody at Plastic People

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  • その当時は誰も知る由もなかったが、Floating Pointsが主催するYou're A Melodyの3回目のパーティーは、Plastic Peopleの最後の夜の1つとなった。同クラブは、今年の年明けに予想外の閉店を発表。長きに渡りロンドンのシーンに大きな影響をもたらしてきたナイトスポットが、突然の終結を迎えてしまった。本調子の夜のPlastic Peopleは、世界で一番のクラブだった。真っ暗なダンスフロアと、その周りを囲むサウンドシステムは、筆者がこれまで体験してきた中でも最も音に没頭できて、文句の付けようのない、素晴らしいクラブ環境だ。また、この街の他のクラブとは違い、Plastic Peopleには首尾一貫した音楽のイデオロギーとコミュニティの本来の姿が存在していた。 You're A Melodyの第1回目は直球勝負の内容であった。その日はFloating Points、Jeremy Underground Paris、そしてRed Gregが、始まりから終わりまで厳選したソウルのレコードをプレイしていた。しかし、後日聴いたこのイベントの音源には、更に好奇心をそそられた。RAスタッフの投票による2013年のベストミックスで第8位にランクインしたこの日のセットは、どちらかと言うと若いオーディエンスに向けて、ミドルエイジのレコード収集家が好むようなディープなディスコやソウル、ファンクがプレイされた。そして、3回目のパーティーには大きな期待が寄せられ、前売りチケットはソールドアウト、当日の午後9時には、オープン前にも関わらず70人ほどの客がドアの前に行列を作っていた。 この日のDJブースでは、Red Gregが再びFloating Pointsの隣に立ち、オールナイトでB2Bセッションを繰り広げた。Red Gregは有名なDJとは言えないが、ディスコファンの間ではカルト的な人気を集める存在なのだ。事実彼は、Floating Pointsがあるレコードを探すのを手助けしている。それは、You're A Melodyのインスピレーションとなった、デトロイトのファンクグループAged In Harmonyによる、同じタイトルの超高額盤である。我々の予想通り、両者共に素晴らしい音楽を披露し、Don Blackmanの"You'll Never Miss A Thing"や、The Warriorsの"Destination"、Mary Clarkeの"Take Me I'm Yours"といったトラックがフロアに鳴り響いていた。ほぼ全ての曲は、筆者やクラウドの多くにとって新たな発見であり、それはFloating PointsとRed Gregによる献身的なレコードディグの賜物なのであろう。 Plastic Peopleのサウンドシステムは、同クラブを構成する要素の中で最も有名なポイントだ。そしてこの日は、いつも以上に良い鳴りをしていた。使用機材は、ドイツEMT社製の30年モノの放送局用ターンテーブルと、Floating Pointsが開発に携わった、ハンドメイドのハイスペックミキサー。その結果を分かりやすく説明すると、この日の音楽は、筆者がそれまでにクラブで聴いたどんな音楽よりも生き生きと鳴っていた。トラックとEQの状態がバッチリとハマった時、その曲のフィーリングは完全に別のものとなった。ソウルのレコードはハウストラックになり、ジャズファンクはシンセの効いたテクノへと変化していたのだ。 そのサウンドはオタクにはたまらないものであったが、注目したいのは、このパーティーは単なるオーディオファンの集いというわけではなかったという点だ。クラウドの大多数は、Plastic Peopleにダンスしに来ている。レコードが終わる度に沸き起こった叫び声や歓声が、何よりの証拠だ。思うに、これこそがPlastic Peopleの魅力の秘密なのだろう。オーナーやメインDJ達は皆、大の音楽オタクであるが、あの完ぺきなパーティーの環境は、彼らがしっかりと現場を見ているからこそ実現されていたのだ。 Plastic Peopleは、多くの人に惜しまれるだろう。同クラブが2002年にオックスフォードストリートから移転した時のように、またどこか新しい場所で復活することを願わずにはいられない(現在ロンドンのシーンが抱える問題を考えると、それも難しいだろうが)。いずれにせよ、You're A MelodyはPlastic Peopleのクラシックナイトだった。同クラブの閉店というだけでも悲しいのに、このパーティーがなくなってしまうのは非常に寂しいことだ。
RA