Red Bull Culture Clash in London

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  • 今回行なわれたRed Bull Culture Clashは、西インド諸島発祥のサウンドクラッシュというカルチャーにとって、かなりユニークなイベントだったのではないだろうか。オーストリアのエナジードリンク会社が若者の為に、そのルーツレゲエという枠から一旦取り外し、拡大、そしてパッケージし直したようなこのイベントは、どこか反発的でもあるように思える。しかし、何度も言うが、Red Bullはそういったことも堂々とやってのける。少なくとも、Red Bull所属アスリートのFelix Baumgartherは、このカフェイン飲料をプロモーションするため、上空38,969.4 メートルの成層圏からジャンプし、フリーフォールの世界新記録の樹立した。この会社は物事を中途半端に行なう会社ではないのだ。 彼らは実際に、そのコンセプトを上手くやり遂げてみせた。Rebel Soundの一員であるDavid Rodigan、そして、サウンドクラッシュの本場ジャマイカのベテランStone Loveがパフォームするという事実は、このイベントの信頼性を裏付けた。それに加え、イギリスのグライム集団Boy Better Knowと、USのラッパーA$AP Mobが参加することもオーディエンスに衝撃を与えた。その夜に起こった、面白く少しばかげた出来事をいくつか紹介しよう。まずは、Rebel Soundが英国のベテランアナウンサーであるTrevor McDonald氏を雇い「我がチームの勝利は間近である」というウソの速報を流した。また、A$AP Rockyは四輪バイクでステージに現れた。そして、BBKがロンドン中のグライムMC達を引き連れて登場した。簡単に言うと、Red Bull Culture Clashは、ダンスミュージックのように、派手で分かりやすいところが魅力なのだ。 また、イベント中には、何度か混乱するような光景も見受けられた。1つのサウンドシステムがもう1つのサウンドシステムから音を奪う度に、何千人ものレイバー達がステージの反対側へと押し寄せていた。筆者もそうであったが、彷徨っているうちにタイミング悪くモッシュピットの中に入ってしまった人も多くいたようだ。辺りを見回すと、そこは上半身裸のキッズ達で溢れていた。A$AP Mobはサウンドクラッシュそのもののコンセプトに混乱しているようであり、その夜は、ほとんど彼ら自身のレコードから選曲していた。その結果、David Rodgian (63歳オックスフォードシャー出身)は、この世界一ホットなラップクルーを非難した。 コンテストとしては、スタートから予想以上に良い勝負であった。初っ端からのグライム・セットで、若者オーディエンスの心をつかんだBoy Better Knowが勝利するかのように思えたが、そこから徐々にRebel Soundが多くのオーディエンスを引き抜いた。印象的だったのが、Rebel Soundがグライム界隈では有名なTempa Tをステージに登場させた場面だ。これにより、オーディエンスはTempa Tを全面的にサポートし、忠誠心と協力的な動きをみせた。ドラマGame Of Thronesで言うところの“反乱”だろうか。この夜一番のハイライトであるように感じた。 ラストスパートで、Rebel Soundはとどめの一撃を与えた。Emeli Sandé、 Pusha T、 DJ Luck & MC Neat、 Beenie Man、そして信じられないことにRihannaのダブプレートを持ち出したことによって、彼らの勝利は確信へと変わった。筆者が以前Rodiganにインタビューした際、彼は、自腹を切ったことによって、多くのジャマイカン・サウンドクラッシュで勝利を収めてきたが、ダブプレートに参加してもらう為にアーティストに多額のギャラを払い、赤字になってしまったことを明かしてくれた。今回は、Rihannaに一体いくらのギャラを支払ったのだろう。それはさておき、全チームがいかに本気でこの勝負に挑んだかということ、そしてその結果が必然的にイベントの面白さにつながったことは紛れもない事実である。 Photo credit: Time Out London
RA