eMMplekz – You Might Also Like

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  • ブリストルを拠点に活動するEkoplekzことNick EdwardsとレーベルMordant Musicを主催するBaron MordantことIan HicksによるプロジェクトeMMPlekzはこれまで2枚のLPをリリースし、今回このプロジェクトでは初となるカセット・テープでのリリースを果たす(カセット・テープ・ユーザーではない人にはデジタル配信での視聴が可能)。Punch Drunkからのデビュー時におけるアナログ・ドローンによる深淵と比べると本作でEkoplekzが担当するトラックはこれまでで最も構造化されリズミカルな役割を増している。というのも本人曰く、即興アンビエント、ハーシュ・ノイズ、リズムとベースを取り入れる、という3つのスタイルがEkoplekzの音楽にはあるようで、本作ではそのリズムとベースの一面が色濃く表れているということだろう。この動きはPerc TraxからのテクノにフォーカスしたEP(Ekoplekzならではの独自の視点からではあったが)から始まっているが、未加工で荒々しく直観的なダイナミズムを重要視する点はスタイルに関わらず一貫している。 一方で食べ物、パブ、インターネットといった日常的な題材とニヒルな感覚が入り乱れ、一種のサイバーパンクのような世界観を生みだすBaron Mordantによる荒涼としたスポークン・ワードが、Ekoplekzが繰り広げる音風景に未来的かつ退廃的でありながら白昼夢のような感覚を持ち込んでいる。eMMplekzの過去2作やMordant Music名義での作品と比べて彼の存在感と求心力が増しているのが印象的だ。彼はスポークン・ワードが持つ物語性がリスナーの鼓膜を通過し脳で知覚される際に色彩や匂いを瞬間的に喚起させること、そしてその一瞬の儚さや移ろいを重要視している。つまりeMMplekzはBaron Mordantが届ける瞬間性とEkoplekzによる即興性が生々しく絡み合いながら広がる世界と言えるのかもしれない。そもそもこのプロジェクト自体が、2人が一緒にいた時にBaron Mordantが何となくEkoplekzのトラックに声を乗せたら面白い結果になったから始まったという、至極シンプルで直観的な生い立ちを持っている。 『You Might Also Like』はカセット・テープでのリリースとなっているが、個人的にはこれまで同様ヴァイナル・フォーマットで本作を手にしたかった。というのもこのアルバムにはeMMplekz史上最もダンス・フロアでの使用に適したトラックが収録されているからだ。顕著なのは”Re Re”、” Gargle Tronslate”、そして“Bedrheum Raver”で、ソリッドなビートと中毒性のあるベースラインがしっかりと用いられている。面白いのは前者2つのトラックにおいてMordant Musicの楽曲の印象が生まれている点で、特にアシッドなベースラインは「The Hauntological Song」や「The Tower」といった作品を彷彿とさせ、今回はBaron Mordantもトラック制作に参加したのかと邪推したくなるほどだ。”Stag Don’t”や”MaMa”ではWarpの『AI』シリーズやBlack Dogを熱心に聞いていたというNick Edwardsらしさが滲み出ていることも含め、以前よりも2人のパーソナルな嗜好性がこのアルバムには色濃く反映されているように思う。 本作が過去2作のアルバムとは異なる方向性に進んでいるのは、Ekoplekzが今年だけで既に2枚のソロ・アルバム『Unfidelity』と『Four Track Mind』をPlanet Muからリリースを経ていることが影響しているのかもしれない。『You Might Also Like』のリズミカルかつメロディ要素を多分に含むトラックはこれまでのeMMplekzというよりも、この2枚のアルバムとの共通点が多いのだ。今回のようにソロ活動での経験がフィードバックされていると、Nick Edwardsの多作ぶりの中にも1つの文脈が見えてくるのが面白い。
  • Tracklist
      A1 Name Blotter A2 Re: Re: A3 Stag Don't A4 MaMa B1 AngloruM SaxonuM B2 Magical Mystery Megabahn B3 Bedrheum Raver 78 B4 Gargle Tronslate
RA