6852: Stratovolanic Vinyl

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    Nov 14, 2014
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  • 東京の、これだけフリーキーな場所が大量にありながら、あまりにも特異な青山ビルディング。六本木通りが青山学院を切り取ると、どうしても残る三角州のような土地にそのビルは佇む。地下というか、青山通り、正に「青山トンネル」の目前に入り口を持つバーAoyama Tunnel。1Fに、青山学院のうず高い壁と青山ビルディングの間の空き地に面し、その空き地がある種のオープン・エアーなラウンジのように横たわるOath、そして2〜4階は、20年以上も営業を続ける蜂だ。多くの東京近郊のハードコアなパーティ・ピープルにとってその存在はよく知られた場所だ。しかしながら、その面積もあって海外のDJたちが招聘されることはまずない。良い意味でディープでドメスティックなDJカルチャーを象徴するこの建物は、この日ばかりはインターナショナルな意匠を持って、また別の輝きを見せていた。Red Bull Music Academyの一連のイベントのなかで、平日ながら、ある意味でその敷地面積から最も密度の濃いパーティになったのは間違いないだろう。 日本列島を形成する全6,852島という数字から名付けられたというこのパーティは、ある種のメインに、Oathで開催される、UKのベース・ ミュージック〜ハウスの担い手Ben UFO、そしてDJ Nobuのback 2 back。そして蜂とTunnelのそれぞれの小さなフロアでは、34カ国から招聘されたという、パーティシパントと呼ばれるRed Bull Music Academyの選ばれし生徒達(日本人アーティスト、Albino Sound、Haiokaの2人も)と、東京在住のアーティストたちによるライヴやDJプレイによって形作られていた。蜂とTunnelでそれぞれ行われたライヴやDJプレイは、テクノからビート・ミュージック、ベース・ミュージックなどさまざまではあったが、さすがに上記の理由から、アーティストたちの流れはまさにカオスが渦巻いている。オーガナイズされた流れをぶった切るようにして行われる、それぞれのそのライヴはある種の表現のエゴを見せつけるかのようで、かえって生々しくRed Bull Music Academyにあつまる人々を象徴するようでもあった。 逆にある種の調和を見せ、DJカルチャーの凄みを見せたのは、先に紹介したBen UFOとDJ NobuのB2Bであろう。Ben UFOのリクエストから生まれたという企画だったが、おそらく日頃のDJ Nobuのディープ・テクノ中心のプレイに親しんだ者にとっては少々の違和感を持ったかもしれない。しかしながら、そんな心配をよそにミニマルなディープ・ハウスから、ときにはUKのレイヴやUKガラージ由来の跳ねたリズムのベース・ハウス、ブレイクビーツ・ハウスやジャングルじみたハードコア・テクノなども飛び出し、それでいて全く破綻のしない流れに驚くばかりだった。どうしてもいまだにトラック・メイカーとしての才覚が、その知名度に影響してしまうダンス・ミュージックのシーン。そのなかでDJプレイのみで頭角を現し、トップへと上り詰めたBen UFO。そのDJとしての手腕は言わずがな。思えば、ある意味で同じ様なサクセス・ストーリーを持つ、DJ Nobu。Ben UFOがわざわざリクエストをしたのがDJ Nobuというのは、よく考えれば納得できる感覚もある。そんな感覚を象徴するように、2人のフロア・コントロールは完璧だった。オープンからラストまで、Oathのあの狭い空間に多くの人が分け入り、まさに満員電車の様相を見せていた。DJを自らの表現としてしてしまうほどの手練れ、彼らの凄みを見せつけられた、そんなパーティとなった。 Photo credits: Dan Wilton / Red Bull Content Pool
RA