Basic Channel - Q Loop

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  • 2014年にBasic Channelを聞く。するとある思いを抱くことと思う。彼らの作品が今でもなお同じ響きを持っているに驚くことだろう。おそらくあらゆるスタイルの音楽よりも、ダブ・テクノは誕生当時のままの姿を保っている。今回のケースで言えば、Mark ErnestusとMortiz Von Oswald、2人の先見の明を持ったプロデューサーによって約20年前に創出されたテクノとダブ・レゲエというあり得ない組み合わせの音楽、ということになる。ダブ・テクノのように明確に生み出されたジャンルを聞くことは非常に鮮烈だ。それゆえに今日この手の作品に権威が与えられるのも必然だと言える。 しかし「Q Loop」のような再発盤を価値あるものにしているのはそれだけではない。多くのBasic Channelファンも同じことを言うだろうが、ErnestusとVon Oswaldの2人の音楽は、普遍的ということ以上のものをやっている。それは、同種の音楽の中でもベストの作品として存在し続けている、ということだ。「Q Loop」はもともとBasic Channelによる1995年のコンピレーション『BCD』に収められた3つのトラックをフィーチャーしたもので、"Q-Loop"はオリジナル・カットよりも約3倍長い13分54秒というフルレンクスで今回初めて登場している。Basic Channelやそこから派生した多様なプロジェクトによる作品の多くと同様、このトラックも伝統的なミニマリズムを実践している。鼓動するベースライン、震えるコード、複雑なパンニングなど、短くも欺くかのように難解なパターンが延々と繰り返されている。聞いていても特段変化は無い。しかし、作品の持つ豊かさが正体を現してくる。それは発生する事象、というよりも、存在する場所と言った方が近い。冷たく灰色をした水中にある場所、しかしそこには同時に心和らぐ感覚があるのだ。 残りの2曲はさらに荒涼としている。"Q1.2"は、蜃気楼のように揺らめく2つのコードが交互に溶け合い、最終的にほぼ知覚不可能な低域のパルス音が加えられるだけの展開から成り立っている。耳を突き刺すような高周波ヒス・ノイズによって薄いガーゼを織りなす"Mutism"は音楽というより、もはやサウンド・アートだ。使用される音数を抑えながらも、両トラックを前にするといとも簡単に我を忘れてしまう。このクオリティはBasic Channelの傑出ぶりを示唆している。いかなる装飾も排除することによって、2人は普遍的で驚異的な没頭性を持つ音楽を作り出していたのだ。
  • Tracklist
      A1 Q-Loop (Full Length) B1 Q1.2 B2 Mutism
RA