AYBEE and Afrikan Sciences - Sketches Of Space

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  • 『Sketches Of Space』はMiles Davisから影響を受けた完全インプロヴィゼーションによるフュージョン作品だ。Miles Davisのキャリア後期にあたる70年代に世に放たれた邪悪なファンクや、トラディショナル・ジャズとは異なり、『Sketches Of Space』で組み合わされているのは、AYBEEがますます接近しているアブストラクト・ハウスと、西海岸のビート・ミュージックをベースに展開するAfrikan Sciencesのユニークなサウンドだ。この組み合わせを聞いても両者それぞれのサウンドには聞こえない。彼らは共にオークランドをルーツに持っているが、AYBEEはベルリンで活動してきている。このレコードはこの2つの街で行われたジャム・セッションによるもので、これまでに両者がそれぞれ関わってきたアナログ作品の中で最も挑戦的なサウンドを収めている。Davisは自身のキャリア中期に新たなジャンルを模索したことで、パイオニア精神のあるべき姿を提示したが、当時の2人は彼の音楽からそれほど影響を受けていなかったという。今回、彼らが辿り着いたのは、エレクトロ・ドラム、コズミッシェ・シンセ、そして鋭いファンクネスによるワイルドな組み合わせから生まれた作品だ。 "Deep East Suite"の3パートにおいて感じるのは、AYBEEとAfrikan Sciencesが困難を極める宇宙の旅にリスナーをなんとしても連れ込もうとしている、ということだ。レコードの始めに収めされた2人がシンセサイザーをカジュアルに演奏する2分間は素晴らしく、そこからカウベルとスネアによるラフなリズムに落ち着いていく。彼らの超絶的な感覚が目に見えて分かるだろう。スペース・エコーの中にドラムを広げていきながら徐々にビート構築し、そして解体していく場面では、彼らが言葉を使わずにコミュニケーションしているのを感じる取れるはずだ。 KubrickがStraussの"Also Sprach Zarathrustra"を『2001年宇宙の旅』の最初と最後に用いて以来、宇宙を舞台にした大作には記憶に残るテーマ・ソングが必要とされてきた。当然ながら『Sketches Of Space』でも、オープニング・トラックが8分にさしかかると、栄光に満ちたシンセのメロディが導入され、全リスナーの注目を集めようとしている。"Part One"が勇敢な航海者の船出を讃えている一方、"Part Two"では、小惑星帯の中を突き進む荒れ狂う航路が描かれている。シンセサイザーによるコードのペアが15分間のトラックに渡って散り散りになるまで歪められていく。なんとも困難で不安定なトラックだ。"Part Three"ではテーマ・ソングが再び姿を現し、以降アルバムは、長く深いアンビエントの中へとクール・ダウンしていく。 続く"K-Fetisch"でのインプロヴィゼーションは、Milesの"On The Corner"における勢いのあるミクスチャー感を彷彿とさせる。"Part One"ではローズ・ピアノとオルガンを、激しいサイケデリック・ギターと混ぜ合わせ、軽快かつファンキーなドラムから始まる"Part Two"は、最終的に映画のようなアウトロへと落ち着いていく。アルバムの最後に収められた"Knew What's Coming (Sculpture)"では、這いついてくるシンセとモノトーンなボーカル・サンプルが用いられているが、HALが2人に対して、永延に宇宙に閉じ込めらることを伝えているかのようだ。 全くもって本作は容易ではない。ドラム・プログラミングは矢継ぎ早に変化し不規則であるし、途方もなく長い時間をかけてキーボードのラインが力強く奏でられ、各トラックには不吉で動揺してしまう感覚がある。とは言ったものの、本当に挑戦的な音楽を好きな人にとっては、気に入る点がたくさん見つかるだろう。本作の目的が、誰も行ったことのない場所に行こうすることであったのなら、彼らはその目的を達成していると思う。問題は、どれだけ多くのリスナーが彼らに賛同する勇気を持っているか、ということだ。
  • Tracklist
      01. Deep East Suite Part 01 (The Call) 02. Deep East Suite Part 02 (Response) 03. Deep East Suite Part 03 (Sunward) 04. K-Fetisch 01 (Kosmo Bahn) 05. K-Fetisch 02 (Vibes) 06. Knew What's Coming (Sculpture)
RA