- 『Dig & Edit』は、レコード・ディガーとして、そしてDJとしても崇拝されているKZAによるシリーズ・アルバムであり、レコード収集にまつわる音楽作品だ。第2弾となる本作に収録された10のトラックにおいて、KZAは様々なジャンルの芯となる部分にまで深く掘り下げており、特にフレンチ・ポップ、ディスコ、そしてドイツのコスミッシェといった音楽に顕著にこのことが表れている。各トラックは、そうしたジャンルに送るラブレターのようだ。
フランスのシャンソン・ディスコのサウンドからサンプリングした"Vous Dansez"には、Serge Gainsbourgのような身の毛もよだつひんやりとした空気が流れており、ループするローズと軽やかにかき鳴らされるアコースティック・ギターが、がっしりとしたヒップヒップの原型のようなビートを覆いつくしている。"Computerstimme"では、ジャーマン・エレクトロニック・ポップにおけるエンジンのような反復にスウィング感が与えられており、トラックはヒプノティックな展開する3つのシンセとロボット的なリズムをもとに構築されている。スタートから90秒後、KZAはディレイの効いたハウス・スネアを加えている他、重心低めのアルペジオにEQをかけて堂々としたベースラインを生み出している。素材の重々しさで身動きが取れなくなっているかのように感じるが、クラウトロックでよくあるように、執拗な反復を通じて空に向かって飛び立っていることが分かる。音楽上における決まり事は、KZAによるモダンな手さばきによって取り除かれているのだ。"Taking It"はさらに素晴らしい出来で、Cori Josiasのサウンドを用いた4秒間のシンセのイントロからスペース・ディスコの壮大な世界へと展開している。
中盤に入ると、これまでに幾度となくサンプリングされているアメリカのアーティストへとKZAの視点がシフトしていく。"Let's Go"では、Brenda And The TabulationsのレコードをMoodymannスタイルでサンプリングし、ベースラインは機能的な3連符へと切り取られ、ピアノはファンキーなトリルへと美味しく仕上げられている。"Want No Other"では、KZAはChicの楽曲を用いて、鮮烈なディスコ・ストリングスやBernard Edwardsによる、がっしりとした低域のリズムから、嵐の渦巻くハウス・トラックを作り出している。2分弱のトラック"Two More"は、往年のロックを彷彿とさせる見事なインタールードだ。そこから終盤にかけて、アルバムは再びディスコ全盛のフランスに突入し、息遣いの聞こえる女性ボーカルがほろ苦いエンディングを演出する"Le Troubalant Acid"にて幕を閉じる。
『Dig & Edit 2』は、KZAが数多のリスナーの中でも最も深い考えを持つ1人であることを証明している。有名、無名問わず、エモーショナルに共鳴しあうレコードに引き寄せられながら、KZAは自身の愛するサンプル素材に最大限の敬意を払っているのだ。このことは、彼のプロダクションは、生きるも死ぬも音源となる素材次第であることを意味している。幸いなことに、KZAの経験豊富で実践的なテイストをもってすれば、悪い結果になることはそうそうないと言っていいだろう。
Tracklist01. Vous Dansez
02. Schritte
03. Computerstimme
04. Taking It
05. Let's Go
06. Want No Other
07. The Beginning
08. Two More
09. Fallin'
10. Le Troublant Acid