Vermont - Vermont

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  • この5、6年、ノスタルジア満載のコスミッシェの氾濫に食傷気味だったが、Motor City Drum Ensembleとして知られるDanilo PlessowとInnervisionsのMarcus WorgullがVermontなるユニットを結成し、この手の音楽に挑み始めたと聞いたとき、興奮したことは確かだ。さらに参加者の中には伝説的バンドCanのドラマーであるJaki Liebezeitの名も含まれており、それはもう完璧な組み合わせだとさえ思えた。 Kompaktから発表となるユニット名を冠したデビュー・アルバム『Vermont』を制作するにあたって、PlessowとWorgullはケルンにあるPlessowのスタジオで特に具体的なイメージを持たずにカジュアルにジャム・セッションを行ったようだ。結果、自己完結しており、かつ効率のいい14つの音風景が描き出されていて、最近のベッドルーム・コスミッシェのようにリスナーの忍耐力を試すようなことはほとんどない。各トラックにおけるシンプルさは、一切のサウンドを無駄にしないようにすることで最大限に高められている。例えば"Dynamik"では星が輝いているようなキーボードとシルキーなシンセサイザーのパターンの上をなめらかに展開していき、やんわりとジャジーな空気へと移ろいでいく。Lena Willikensによるテルミンによって特徴付けられている"Lithium"はTangerine Dreamが月の向こう側から地球にコンタクトを試みているかのようだ。Phantom BandのDominik Von Sengerのギターが心地いい"Montag"にいたっては70年代後半のManuel Göttschingの誰も聞くことのなかったテイクかと思えるほどだ。 Liebezeitは静かに登場してくる。このクラウトロックのベテランは"Cocos"において簡潔で、もはや瞑想的ともいえるドラム・フィルを展開しており、"Macchina"ではトライバルなリズム・パターンが陶酔性を引き立てている。最初はそれほど大したことないアレンジに思うかもしれないが、聞いていくにつれ、Vermontの情景豊かなサウンドが彼のドラミングによっていかに色づけされているのかに気付くはずだ。 ここに表現されているサウンドの行間に注目すれば、VermontのDNAにはモダンな血が流れていることが分かる。1曲目の"Yaiza"はアンビエント・コンポーザーでありハウス・アーティストでもあるSusumu Yokotaの作品のようにも聞こえるもので、夜明けにゆっくりと地平線から立ち昇ってくるようなシンセとメロディが広がっている。"Ubersprung"ではMule MusiqやDialを想起させる鐘の音と空間をふんだんに利用した音色を取り入れている。70年代のコスミッシェ、もしくは、もっと現行のサウンド、そのどちらからインスピレーションを受けているとしても、Vermontのデビュー・アルバムは絶えず興味をそそるものであり、豊富なテクスチャーを体験できる作品だ。今回のプロジェクトは音遊びとして始まったものかもしれないが、PlessowとWorgullが具体的なイメージを持って再びスタジオに戻ってくることに期待したい。そう、2枚目のアルバムに。
  • Tracklist
      01. Yaiza 02. Rückzug 03. Übersprung 04. Sharav 05. Dynamik 06. Majestät 07. Cocos 08. Elektron 09. Katzenjammer 10. Droixhe 11. Macchina (Side A On Bonus 7-inch) 12. Ebbe 13. Lithium (Side B On Bonus 7-inch) 14. Montag
RA