Rainbow Disco Club 2014

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  • 晴海客船ターミナルにて開催される春の都市型フェス、Rainbow Disco Clubは、高水準のアーティスト陣、クオリティの高い音響、レインボーブリッジが見渡せる絶景、アクセスしやすい立地などの魅力から、歴史は浅いながらも(今年で3回目の開催となった)すでに日本を代表するエレクトロニック・ミュージック・フェスの1つとなっており、RAでは2013年、2014年共にTop 10 Festivalsに選ばれている。2010年に第一回目を開催したのち、2011年は大震災、2012年は悪天候の影響で立て続けに中止になるなど不運に見舞われたが、去年は大盛況に終わり、今年の開催を楽しみにしていた人も多いはずだ。メインステージとなる屋外の<Rainbow Disco Club Stage>の今年のラインナップは、毎回レコードが発売すると瞬く間に売り切れる、デトロイトの鬼才、Moodymannと、同フェスには通算3回目の登場となった、ニューアルバムを発表したてのニュー・ディスコの貴公子、Prins Thomas、そしてMove DとJuju & JordashによるユニットMagic Mountain High、Ben UFOとPearson Sound、Pangaeaから成るHessle Audioが登場し、DJ Sisiがオープン・アクトを務めた。階段を上がった所の建物内のサブフロアは、今年の8月についに東京で開催されるRed Bull Music Academyとのコラボレーション・フロア、<Red Bull Music Academy Stage>となっており、San Soda、Kez YM、Hiroaki OBAらRBMAの卒業生が出演した他、去年に引き続きKuniyukiがライブを行い、シークレットゲストとして直前まで名前が伏せられていたDJ Kozeがトリを飾った。 空は、決して快晴とは言えない灰色一色であり、風も少々強かった上、小雨がパラパラと降った時間もあったものの、音楽に集中できなくなるほど天気が悪くなることはなく、気持ちよくイベントを楽しむことができた(「今日ぐらいが丁度良い」という声もチラホラ)。RDCのレジデントDJとしてお馴染みのSisiが、その場の空気と共鳴しながら丁寧に展開を構築していく、オープニングに相応しい心地の良いセットを披露したのち、お昼を過ぎた頃に登場したMagic Mountain High。彼らが構築するサウンドに反応し、身体を揺らす人達がどんどんと増えていった。十分に場が温まった頃、登場したPrins Thomas。テック・ハウスでガンガンに攻めたのち、ディスコへと持っていき、フロアは大いに盛り上がった。締めに山下達郎の“Sparkle”をかけており、日本人の琴線を熟知していると感じた。メインフロアは爽やかな雰囲気が漂う一方、屋内のRBMAフロアは、熱気と迫り来る音圧で満たされた漆黒の闇。サイケデリックな色彩を発光するスクリーンの前に立ったDJが、シルエットとなり脳裏に焼き付く空間だ。まずはKez YMがムードのあるハウスを展開した後、バトンタッチしたHiroaki OBAは自身の楽曲をその場で組み立てていき、独自性のある世界観を見せた。 さて、メインステージのDJブースの向こうに、カツラで顔を隠し、フードを被り、自身の楽曲と同じ程のミステリアスなオーラを纏ったMoodymannが登場した時、フロアの混み具合は最高潮に達していた。それまでのディスコ・リズムの流れを一旦断ち切り、あえてスローなテンポの曲から始めた彼は、ソウル、ファンク、ヒップホップなどの楽曲も巧妙に織り交ぜ、じらしながら徐々にテンポを上げていった。エレクトロニックなサウンドも、生音も自由に組み合わせながら、終始真っ黒なダンスミュージックを轟かせ、これぞデトロイトといったセットで観衆を湧かした。タイムテーブルにはLiveという表記は無かったものの、後半、ミュージシャン2人(Jeremy EllisとJohn Arnold)とアフロヘアーのバックシンガーの女性2人が登場し、最近発売したアルバム『Moodymann』から、”Freeki Muthafucka”、”Lyk U Use 2”、”Hold It Down”、”No”などをパフォーマンスするというサプライズもあり、フロアは狂喜乱舞の渦と化した。 RMBAステージでは、San Sodaがハウスからディスコまで、バランスの良い選曲でしっかりと客を踊らせたのち、Kuniyukiが登場し、その場で演奏した音などを用いてリアルタイムで曲を構築する、スリリングなライブを展開した。外はすっかり陽が落ち、ライトアップされた美しい夜景に囲まれる中、Hessle Audioがメインフロアをテクノ/アシッド・ハウスで埋め尽くしており、イベント終了まで興奮は覚めやらぬままであった。そして、RBMAフロアのラストに登場したDJ Kozeは、ミニマルかつ閑々たるハウスの多幸感溢れるセットで、心地良く締めくくった。最後にはブースの後ろのカーテンが開き、窓から煌めくレインボーブリッジが見えるというセンスの良い演出も、良い印象を与えるものであった。 子供やお年寄りも含め、幅広い年代の様々なタイプの人々が訪れており、終始雰囲気も良く、また来たいと思えるフェスであった。しかし少々気になったのは、メインフロアの音響が前年に比べて劣っていたように感じたことだ。音が綺麗に聞こえたのは、広場を囲むように設置されたスピーカーの真ん中のあるポイントだけで、その位置をズレるとバランスが取れていないように感じた。ステージに関しても、今年は高い所にあったが、ライブでは何が行われているのかよく見る事ができず残念であった。そして、サブフロアに関しては、もう少しレーザーやライトが設置されていても良いのではないかと思ったほど、真っ暗であったが、これは好みの問題かもしれない。しかし総合的に見て、会場は広すぎず、出演者陣は少数精鋭で、じっくりと好みのアーティストを堪能することができた上、昼間は爽快感、夜は煌びやかな夜景と、通常のオールナイトのクラブ・イベントには無い環境の魅力を味わうことができた。Rainbow Disco Clubは、開催を重ねるごとにリピーターを獲得していくフェスだろう。来年の開催が今から楽しみだ。
RA