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    Apr 7, 2014
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  • 現在東京のクラブシーンは、我々がReal Scenesシリーズ最新作でお伝えしたように、高齢化や複雑な風営法といった様々な問題を抱えている。After 25のカンファレンスでは、ベルリンのクラブカルチャーというプリズムを通してそれらの問題を検証していった。ベルリンのシーンもまた、全く違ったものではあるが様々なハードルを抱えており、そのほとんどは街の再開発によって生じた問題や、シーンの成功を成し遂げることへの挑戦などである。さて、今回核心となる質問はこれだ。「東京はベルリンから何を学ぶことができるか?」 デイタイムのカンファレンスにおける目玉は、Tobias Rapp(『Lost And Sound: Berlin Techno And The Easyjetset』著者)の指揮によるディスカッションだ。その他のパネラーとして、斉藤貴弘弁護士、今は無きベルリンのBar 25の創設者の1人Juval Dieziger、ベルリンクラブコミッション会長Marc Wohlrabe、そしてNative InstrumentsのTobias Thonらが、東京のドイツ文化センターに集まった。Rappによるカンファレンス開始の言葉は、鋭く洞察力に満ちたものであった。しかし質問タイムに入ると、ベルリンのクラブの気分屋のバウンサーやドアポリシーなどに話題が集中してしまい、肝心なトピック(例えば、どうやったら日本の若い世代をダンスミュージックシーンに引き込むことができるのか)はなかなか出て来なかった。これには、せっかくの機会なのにもったいないなという印象もあったが、実際に声を上げて質問した参加者の幅の広さ(ミドルエイジのアートギャラリースタッフ、若いクラバー、著名DJ)には、様々な世代や職業の人達が、東京のクラブシーンの未来を気にかけているという事実がしっかりと反映されていたようだ。 カンファレンス終了後は、会場を代官山UNITへと移しナイトタイムプログラムがスタート。Guenter Schickertのコズミックなギターのサウンドは、空に浮かぶ雲のように広がった。上階ではRainbow Disco ClubのSisiがスローテンポなディスコチューンをプレイ。Burnt Friedmanのセットはいくぶん緩く感じられ、彼ならではの繊細なサウンドがUNITのメインルームに響き渡ることはあまりなかった。 ヘッドライナーはMonolakeことRobert Henke。彼が最新プログラムLumièreをクラブで披露するのは、この日が初めてである。このパフォーマンスを行うのに、ネオンとエレクトロニクスに溢れた東京の街ほど完ぺきな場所はそうそうないだろう。Lumièreは、一言で言えばレーザーが全てだ。金属のカットや、傷ついた眼球の治療、そして隕石の撃破などあらゆる場面で活躍するレーザーだが、エレクトロニックミュージックにおけるそれの役目は決まりきっている。レーザーを使用したショウは中身より見た目を重用しする場合がほとんどだが、Henkeのテクニックは他の追随を許さないレベルである。A/Vパフォーマンスにおける"V"は二の次にされがちだが、Lumièreはレーザーこそが主役。Henkeのヴィジュアル1つ1つが、異なったサウンドを放つのだ(例えば、レーザーによって描かれた円と四角では、それぞれ違った音を持つ)。 青い光の筋がスクリーンを射す光景に釘付けになる人もいれば、大きな歓声を上げる人もいた。レーザーで描き出されたイメージは、コンピューターのコードや科学実験を思い起こさせるようなものであったが、渦巻きや捩れたイメージによるトリッピーな展開もあった。ヴィジュアルへのフォーカスによって、時に音楽が平凡になってしまうこともあるが、あれほど魅了されてしまってはそこに文句を言うこともできまい。 Lumièreの終了後は多くの人が出口へと向かってしまったが、フロアに残った人間には、ローカルフェイバリットであるDJ Nobuによるクラッシィなセットというご褒美が振る舞われた。Schickertから始まり、Friedman、そしてMonolakeまで、この日は踊るチャンスがほとんどなかったのだが、Nobuによる沼のようなテクノセットのおかげで、我々は解き放たれたような気分となったのだった。 Photo credits: Masanori Naruse
RA