Bibio – The Green EP

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  • Bibioはこれまで様々なスタイルを試してきた。ポップなエレクトロニカからBoards Of Canadaによって知れ渡った眩いブーンバップなどだ。しかし、ローファイなボーカルとアコースティック・ギターと霞むようなシンセを用いて制作しているときの彼が一番輝いているように思う。「The Green EP」には新旧の楽曲が集められ、昨年の『Silver Wilkinson』でも聞くことの出来たアンビエント感のある電子アコースティック・フォークによって豊かな模様を描き出しており、その結果、非常に訴求力の強い仕上がりになっている。 "Dinghy"はアナログらしいこもったテクスチャーの中に埋もれたメロディが中心となったトラックで、一方"Down To The Sound"ではテープ・ヒスと海でフィールド・レコーディングしたサウンドが悲しく痛烈なボーカルとアコースティック・ギターを混ぜ合わせている。エコーを多用したインストゥルメンタル・トラック"Carbon Wulf"は『Silver Wilkinson』に収録されていた"Wulf"の別ヴァージョンであり、本作におけるハイライトだ。リバーブの効いたギター・サウンドは壮大でありながら親密な暖かさを生み出している。"Dye The Water Green"でのボーカルも同じくリバーヴに覆い尽されているものの輪郭がハッキリとしている。静かに立ち昇ってくる切ないメロディとノイズの乗ったドラムにエレキ・ギターが幾分か重みを与えている。そして次第に消えていくメロディを前にただ立ち尽くしてしまうだろう。 Bibioの楽曲には、ビネットのようなものを意識させる瞬間がある。"A Thousand Syllables"がその好例で、最初に用いられるストリングスは沈黙に近い状態にまで徐々に減衰していき、アコースティック・ギターと柔らかなボーカルが入ってくるとトラックは全く違うものへと変化する。「The Green EP」の収録曲の多くは未発表だったもので『Silver Wilkinson』よりも前に制作されたものだが、違和感なく新しい楽曲と共に収まっている。例えば最後のインストゥルメンタル・トラック"The Spinney View Of Hinkley Point"での生ドラムによるサウンドは、他の収録曲におけるデリケートなテクスチャーを経てきた分、心地いいロウな質感を感じさせている。
  • Tracklist
      A1 Dye The Water Green A2 Dinghy B Down To The Sound
RA