Various Artists - 1112013 Stopping Outwards

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  • Stochastic Resonance - 確率共鳴と訳されるこの言葉は、微弱なノイズが別の微弱な音声信号に加わることにより、知覚可能なレベルにまで音声信号が強まる現象を指す。この言葉をレーベル名に冠したStochastic Resonanceによれば、レーベルはマルチメディアを用いた新たなコミュニケーションの在り方を模索し、その意識を促進することを目的に活動を展開している。6番目のリリースとなる本作はこれまでにリリースされている『Numbers』3部作の最後にあたる作品であり、電子音楽における実験という共通言語から多くのバリエーションが生まれることを示したものだ。配信リリースの他、限定でCD、アナログ盤でも発表されている。 深いドローンが徐々に響きを変えながら包み込んでいくAkamoiによる"Little Black Box"。ディープ・リスニングを喚起するようなサウンドは音無き音へと意識を促す。Ynaktera"Three Phase"ではグリッチ音とノイズにアタック部分が強調されたキックがつんのめるように打ちつけられている。特に後半部でのシンセが生み出すマッドネスは大音量での視聴でこそ効果を発揮しそうだ。硬質なキックとベースにより本作で最もフロア仕様となっているEl Cosmonauta"7K-OK (A)"では数小節ごとに異なるフィルインが用いられていることでテンポよく躍動感を増していく。リズム構成が特徴的なMariano"Mysterious Way"では対照的にビートの抜き差しではなく、SEとブリープ音、そしてつんざくようなパッドサウンドにより坦々としかし着実に展開していて面白い。過大入力で歪んだようなノイズが全てを飲み込むGhostphace"Rome Boredom"でのアナーキーぶりも、前述のコンセプトに基づいた本プロジェクトの中ではしっかりと文脈を成すものとして機能するものだと言えるだろう。3部作の壮大なエンディングを演出するのはScual"The Fade Of John Gray"だ。オルガンとストリングスが入り混じったような複雑な響きを作り上げるシンセ音が大きく抑揚し本作の幕を閉じている。
  • Tracklist
      A1 Akamoi - Little Black Box A2 Ynaktera - Three Phase A3 El Cosmonauta - 7K-OK (A) B1 Mariano - Mysterious Way B2 Ghostphace - Rome Boredom B3 Scual - The Fade Of John Gray
RA