STL - At Disconnected Moments

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  • STLのアイデアに対して魅力的なコントラストを成すものがSmallvilleには存在している。ハンブルグに拠点を置くこのレーベルは整然としていて柔らかなエモーショナル・ハウスで知られているが、一方でSTLことStephan aubnerのスタイルはダーティーで緩く展開するものであり、彼の作品は歪んだキックとざらついたハイハット、そして駆り立てられるようなシンセで溢れかえっている。ほぼ完璧と言えるダブ・ハウスの傑作EP「Silent State」(英語サイト)を2009年にリリースするなど、レーベルはこれまでにもいくつかの素晴らしい音楽を発表している。Laubnerのニュー・アルバム『At Disconnected Moments』では今まで以上にこの領域を掘り下げており、7つの未発表トラックと既存曲から選ばれた2つのトラック、そして4つのループ溝が収録されている。CDとLPにて入手可能だ。 しかし、期待してしまっているせいか、何かが上手く機能していないように感じる。STLは非常に独特な色彩感覚を持ったアーティストであり、普段ならもっと幅の広さがあるはずだ。Somethingから発表した彼のアルバムは心地よい響きと不協和音が交互に訪れる準アンビエント作品であり、そのコンセプトに沿った上でのレイブ感覚を持った作品だった。"Dark Energy"や"Something Is Raw"が良い例だろう。一方、『At Disconnected Moments』では全編を通じて埃っぽいダビーなテクノに分厚いリズムとぬかるむようなベースラインを組み合わせているだけで、1つのスタイルが延々と繰り返えされているように感じるのだ。素晴らしいトラックももちろん収録されてはいる。"One Day"や"Amelie's Dub"は音数の詰まったビートにも関わらず美しく繊細なトラックであり、"Ghostly Ambit"はLaubnerの最もミステリアスな一面が表れていると言っていいだろう。しかし全体的には均一的な印象があり、最後まで落ち着いて聞けるアルバムであるとは言い難い。 特にこの印象はCD盤において顕著に感じられる。フル・レンクス作品という意味ではLaubnerの音楽性を最も良い状態で伝えることが出来るフォーマットはアナログ盤だろう。新曲が7曲とループ溝を収録するならば2枚組アナログ盤が相応しい。Smallvilleはアナログ盤でも本作をリリースしているが、既存のトラック2曲"Silent State"、"Neurotransmitting Clouds On The Secret Freeway"を一緒にコンパイルしただけのCDのような印象である。両トラックは共に素晴らしいのだが5年近く前のトラックであるため、若干ながら本作から浮いてしまったように聞こえるのだ。既に1時間もの収録時間になっているにも関わらず、合わせて22分に及ぶこの2曲のトラックがさらに追加されている。 とはいえ、STLはSTL。退屈な作品であったとしても刺激的であるアーティストであるという印象を与えると思う。凍て付くような空気とダーティーなテクスチャー、そして何よりざらついたあのビートが用いられていることによって『At Disconnected Moments』は多くのLaubnerファン、特にDJを上手く魅了することだろう。それがたとえ冗長な内容であったとしてもだ。
  • Tracklist
      01. Scuba’s Motion Dub 02. One Day 03. Neurotransmitting Clouds On A Secret Freeway 04. Space Cats 05. Amelie’s Dub 06. Silent State 07. Good Wine 08. Ghostly Ambit 09. Over And Out
RA