Mssingno - Mssingno EP

  • Share
  • レーベルGoon Club Allstarsは、WileyのトラックをMoleskinとSamenameがリフィックスしたEPのリリースと共にシーンに登場し、新旧のグライムに傾倒した音楽性を示唆している。しかし今回、2枚目のリリースとなるEPを担当するプロデューサー、Mssingoは異なる方向性を持っているようだ。Mssingoがロード・ラップと関係しているのは間違いない。彼はロンドンのMC、Casと共に"Drugs Don't Work"を制作している。これはThe Verveの原曲を驚くほどエモーショナルなフロウによって再構築したものだ。使用されているリズムは明らかにUSラップからの影響を窺うことが出来る。この曲でのCasの鼓動ぶりや、傑作"Brandy Flip"が共に示しているように、Mssingnoの音楽性を定義付けるものは、琴線に触れるポップな感性の素晴らしさにあると言えるだろう。さらに彼は自身に掟を課している。その気になれば出来るにも関わらず、彼はミックスを何度も取り直したり、多幸感に溢れるだけのありがちな音楽に仕上げるようなことは避けているのだ。代わりに彼の音楽では、ループが心地よい空間を作り上げ、坦々と聞く者の感情に訴えかけている。 Mssingnoのデビュー作となる12インチは、これまでで最も素晴らしい出来の作品だ。本作一番の魅力となっている"XE2"では、中毒性高くカットアップされたR&Bが着実に展開していく。後半では、控えめなビートが用いられているが、安易に予想できるような808サウンドになることは決してない。ピッチ・エフェクトの効いたボーカルときらめくシンセを用いた"XE3"では、眩暈を起こしそうな恍惚の世界を駆け巡っている。ここでは危険なまでに感覚が薄くなっているが、幸いなことにMssingoのコードとアレンジメントが完璧なバランスで用いられている。"Skeezers"と"124th"では伝統的なラップ・スタイルを取り入れている。後者のトラックはアグレッシブに感じられるはずなのだが、密度の濃いシンセ・アレンジと、ふんわりとした巨大なベースラインによって、柔らかな印象が与えられている。前者のトラックでは、早くもMssingoのトレードマークとなろうとしている、きらきらと輝くベルのようなシンセにRihannaを組み合わせている。こうしたトラックはサウンドの繊細さに若干欠けており、所々、ミックスダウンでは各要素を薄めても良かったかもしれない。しかし、おそらく、この作品を堪らないほど魅力的なものにしているのは、そうした即興性にあるのだろう。
  • Tracklist
      A1 Skeezers A2 XE3 B1 XE2 B2 124th
RA