Vatican Shadow - Remember Your Black Day

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  • Dominick FernowがVatican Shadow名義としてこれまでで最も完成度の高い作品を仕上げてきた。これはPrurient名義よりもテーマがハッキリしており、Rainforest Spiritual Enslavement名義よりも即席性があるものだ。Vatican Shadowとして初めてのフルレンクスアルバムとなる『Remember Your Black Day』によって、Fernowはこのプロジェクトにおける真の深みへと追求を始めようとしている。 インダストリアルミュージックにおいて一般的に軍隊のような要素を感じさせるものは、お約束的なものであることがほとんどだが、Fernowのそれは違うように感じる。彼はそうした要素が蔓延している世界に生きているようにも思えるが、『Remember Your Black Day』は、戦争に価値観を見い出すのではなく、むしろ嫌悪感を露わにしようとするものに見えるのだ。本作は"Contractor Corpses Hung Over The Euphrates River"においてピークを迎える。このタイトルは2004年にイラク、ファルージャで死に至ったブラックウォーター社の4人について言及している。これはアルバム上、最も不安感を煽るものであり、即効性がある。しかし同時に何とも言えないハーモニーの調和があり、鈍く沈んだベースによる連鎖していくようなリードラインが渦巻き、コード間を落ち着きなく行ったり来たりしている。 反復、これぞまさにFernowの武器だ。『Remember Your Black Day』において、彼はこの反復によって威力抜群の効果を生み出している。リズム感のあるグルーヴを伴ったトラックも違和感なく差し込まれており、カタカタとしてキックドラムが特徴的な"Remember Your Black Day"、シャッフル感のあるパーカッションがディープにミックスされた"Jet Fumes Above The Reflecting Pool"および"Tonight Saddam Walks Amidst The Ruins"などがそれにあたる。皮肉めいたタイトルの"Enter Padadise"では単独のギターリフが爆発しているようなキックと共に配置され、その構造をほとんど変えることなく、本作で最も主張力の強い6分間を形作っている。 Silent Servantのプロダクションの後押しもあり、その世界観が新たに明確になったおかげで、『Remember Your Black Day』はこれまでのVatican Shadow作品とは異なる場所に堂々と位置するものとなっている。『Kneel Before Religious Icons』で披露していた窒息してしまいそうなリバーブとディストーションはここにはもう存在しない。Fernowは今、メスのように研ぎ澄まされた精度で自身の音楽と向き合っており、そこでは靄が消え去ったかのように、シンセサウンドはより澄み渡り、ドラムサウンドはタイトにコントロールされている。 しかし『Remember Your Black Day』で最も印象的なのはFernowの政治経済に対するセンスだ。本作は物語性を通じて展開しており、嵐の前の静けさから雷鳴轟く混迷を経て、残虐な戦争が終結した後の友好条約へと到る。こうした全ては彼が一切の装飾を排したトラックとミニマルな要素と並行して維持し続けているものだ。FernowがVatican Shadow名義におけるこれまでの作品で触れてこなかった方法によって『Remember Your Black Day』は非常に強くまとまった作品に仕上がっており、本作は厳粛で恐ろしくもありながら有望プロデューサーとしての新たな地平を示そうとしている。
  • Tracklist
      01. Circumstances Quickly Became Questioned 02. Tonight Saddam Walks Amidst Ruins 03. Muscle Hijacker Tribal Affiliation 04. Contractor Corpses Hung Over The Euphrates River 05. Enter Paradise 06. Remember Your Black Day 07. Not The Son Of Desert Storm, But The Child Of Chechnya 08. Jet Fumes Above The Reflecting Pool
RA