Seven Davis Jr. - One

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  • Seven Davis JrはPrinceのファンだと賭けてもいい。Must Have Recordsから初となるEPにおいて、LAのアーティストである彼は1981年頃のミネアポリスにおける黎明期のファンクサウンドからエッセンスを抽出し、生々しいロウなハウス要素を組み込んでいる。Soundcloudにアップされていた"Controversy"のカバーイメージを見れば、このことが良く分かる。ドラムマシーンとベースラインのみで構成された"One"では時折、ラフに鳴らされるシンセによって、色付けが成されているのみである。しかし昨年リリースされたOmar-Sによるボーカルアンセム"S.E.X."のように、このトラックもあからさまにセクシャルな要素を含んでおり、あたかもドラムマシーンが体にまとわりつきながら一夜を誘っているかのようだ。Davisによる多重録音したボーカルによって、このトラックは最後まで展開が保たれている。その声は非常に疲弊しきっているかのようでもあり、しかし同時にトラックを導くほどの力強さを持ち合わせている。 片想いのような寂しさを感じさせる"Breaker"は弾けるようなキーボードによって味付けが成されている。トラックの隙間を埋める、というよりもグルーヴに上手く乗りながら、Davisは「I hope someone breaks your heart / 君がフラれてしまえばいいのに」と未練がましく、ゆっくりと巻き付くように歌い上げる。"All Kinds"には、カッコ書きで"Loud Mix"と的を得た名前が付けられている。このトラックは非常に歯切れが良く、本作で最もロウな1曲だ。他の2曲もやはり一風変わった感じはあるものの、こちらでは、よりシリアスなムードが漂っている。キッチンの流し台ファンクとでも言えるような"Open Up"はフィルターにどっぷりと浸かっている一方、すらりとした印象の"Leave A Message"ではギザギザとしたスネアドラムがトラックを切り裂くように打ち鳴らされ、そのたびに竦みそうになってしまう。本作における感情的なボーカルと端整なプロダクションには明らかな抑制が施されている。たった2、3の要素を用いるだけでポップな要素をこれほど普遍的な響きへと変えてみせるDavisの手腕は素晴らしいという言葉では言い表しきれない。
  • Tracklist
      A1 One A2 Breaker B1 All Kinds (Loud Mix) B2 Open Up B3 Leave A Message
RA